特に子供を対象としたライブは最も実績が少なく、指折り数えてもこの12年で5〜6回ほど。その多くは苦戦していたが、新発想で臨んだ3年前の児童養護施設対象のライブでは、大きな手応えを感じていた。
聞けば、今回の聴き手も同じ幼稚園児から小学生だという。当時の記録を参考に、似た構成で臨めば、それなりにうまく運ぶはずと考え、引き受けることにした。
会場は町内会が管理する町内会館で少し遠いが、時折招かれる有料老人ホームやデイサービスの近隣にあって、土地勘はある。寒さも緩んで道路からは雪も消えた。車の流れはスムーズで、35分で先方に着いた。
開始は10時で、5つある出し物のうち、私がトップバッター。歌で元気よくイベントを始めたい、という意向があったのか。
子供たちは床に座り、15センチほどのステージ上で歌うことになる。後半で歌う「ピクニック」の動物の鳴き声を保護者の方と掛け合いでやることになっており、そのタイミング等を簡単にリハーサルする。あっという間に時間となった。
10時ちょうどに開始。聴き手は保護者も含めて40名ほどか。持ち時間はアンコールなしの20分ちょうどなので、あまり余裕はない。以下の7曲をトントンと歌った。
「ウィンター・ワンダーランド」「チキ・チキ・バン・バン」「幸せなら手をたたこう(聴き手参加)」「ビリーヴ」「さんぽ(歌詞指導)」「ピクニック(保護者とのコラボ)」「オー・シャンゼリゼ」
1曲目は12月ということもあり、Xmasソングを歌ったが、他の場では自然発生的な手拍子が出ることも少なくない歌に、会場は終始静かなまま。この時点で(今回は苦戦するかも…)という悪い予感が走る。
続く「チキ・チキ・バン・バン」は、過去に子供たちがマイク回りで踊り始めたことのある曲だったが、同様に反応は極めて弱い。
(あとで気づいたが、立って歌う私と床に座っている子供たちとの間に、微妙な距離感があったかもしれない)
(あとで気づいたが、立って歌う私と床に座っている子供たちとの間に、微妙な距離感があったかもしれない)
そんな展開も想定し、中間に配置した聴き手参加型のカンフル曲「幸せなら手をたたこう」で、ようやく場が元気になる。続く「ビリーヴ」「さんぽ」も、特に低学年で一緒に歌う子供たちがけっこういて、その勢いで一気にラストへとなだれこむ心づもりだった。
ところがラスト前の保護者とのコラボ「ピクニック」が誤算。本来この曲は動物の鳴き声担当者が歌い手の真横に立ち、漫才のような掛け合いで進めるもの。過去2回はその手法で臨み、大きな盛り上がりにつながっていた。
今回は事前の打合せで、保護者の方が複数で子供たちの周囲に立ち、鳴き声を担当するという。前例はなかったが、希望には沿うことにした。
しかし、いざ本番になると次の演目の準備などがあったのか、会場にいて鳴き声を出す方はごく少数。タイミングやアクションも打合せとはかなり違った。子供たちが大喜びするはずが、期待外れに終わってしまう。
ややしぼんだ雰囲気のまま、時間切れとなる。ラストの「オー・シャンゼリゼ」で自然発生的な手拍子が出たのが救いだったが、ライブ月間のスタートとしては悔いの残る、ほろ苦オープニングとなった。
聴き手の対象年齢が同じで曲目構成が同じでも、場によって受けたり受けなかったりする。子供が対象のライブの難しさを、改めて思い知った。