2016年12月20日火曜日

ギブスは外れたが…

 延々と続く怒涛のライブ月間で、ぽっかりスケジュールが抜けたエアポケットのような休息日だった。しかし、こんな日に限って、母が整形外科に通院する指定日である。
 実は診察日は1ヶ月前に決まっていて、その日を避けてクリスマス関連のライブスケジュールを前後に詰め込んだ、というのが正確なところ。

 距離が少し近くなったとはいえ、早起きして施設へ迎えに行き、母を説得して車椅子に載せ、非力な軽自動車を操って病院を往復する煩雑さに変わりはない。
 大雪は降りはしないか、寒さはどうか、我が身の腰痛は大丈夫か…等々、あれこれ考えだすとキリがなく、ライブ予定をこなすほうが、むしろストレスは少ないかもしれない。
 ともかくも9時少し前に施設へ迎えに行き、9時5分には車で出発した。母は案外素直に従ってくれたが、一瞬だけ外に出たとき、「お〜、寒い!」と大騒ぎ。若い頃から寒さにも暑さにも弱く、意外にこらえ性がないタチである。
 気温はマイナス6度ほどと、確かに健常者でも寒い。持参の厚手のコートを着せ、手袋とひざ掛けを使い、ヒーターを最大にセットする。

 30分ほどで病院に到着。はめて3ヶ月が経過した左肘のギブスは、この日外すことになっていた。レントゲン撮影の前に診察台で作業開始。工具の音がうるさいので、私は待合室に移動してはいかが?と言われたが、どんな作業か興味津々だったので、立ち会うことに。
 取り出したのは、金属を磨いたり切ったりする「ディスクグラインダー」という大工道具そのものである。看護師さんが器用にそれを操り、石膏で固めたギブスを切断してゆく。
 片側は簡単に切れたが、ギブスはまだ外れない。反対側も切る必要ありとのことで、腕を押さえる役の看護師さんがもう一人加わり、ようやく外れた。


 レントゲン撮影の結果、患部は周辺に新しい骨が盛り上がってきつつあるが、まだ切断部の隙間が埋まってなく、完全接着とは言えないという。
 ボルト3本で固定した大腿骨も似た状態だが、肘よりは隙間が埋まりつつあり、状態はこちらの方がいいようだ。
 かくしてギブスはようやく外れたが、今後も経過観察として、月に一度は通院するように言われた。今日こそ最後の通院と期待していただけに、正直ガッカリした。こうなれば長期戦を覚悟せざるを得ない。

 生活は通常に戻してよいが、くれぐれも再転倒はしないように、とのこと。実は昨夜と今朝の2度に渡り、新しい施設の居室で母がまた転んだらしい。
 職員の目が届かない時間帯にベットを抜け出し、車椅子なしで床に下りて歩いたことによるもの。前施設で今年になって3度転倒した経緯と全く同じで、腰と肘の痛みが回復して動けるようになったことと関連がありそうだ。
 深夜や明け方にベットを抜け出して、いったいどこに行こうというのか?どうやら母にとって、いまの施設も安住の居場所ではないらしい。

 今回は大事に至ってないが、次に大きな転倒をすると寝たきりになりかねない、という危機意識が、母にはまるで欠落している。
 認知症が相当進んでいる証しで、こちらはすでに回復不能。どのような施設でも四六時中見守る介護など不可能で、いよいよ最悪の事態も覚悟しなくてはいけないか。