デイサービスで私が歌うことを知って、障がい者支援部門の担当者から連絡があり、同じ日の別の時間帯で歌ってもらえないか、との打診があった。
今年は他の系列施設でも歌わせていただいた。確かな信頼関係が築かれつつあり、同じ日の同じ建物なので、ありがたくお受けすることに。
問題は聴き手の年齢や障がいの程度のこと。過去に何度か同様の施設で歌っているが、おしなべて嗜好が幅広くてマニアック。年齢層もかなり若い。
今回もその例外ではなく、とりあえずリクエストを募ってもらうことになる。時間も短めに設定した試験的なライブという位置づけになった。
自宅から車で15分弱なので、渋滞に対する不安はない。予定時刻の20分前に到着。会場に入って素早く機材をセットし終え、予定より5分早い13時15分から始めた。
およそ25分で8曲を歌う。
「北国の春」「愛燦燦」「大空と大地の中で」「恋の町札幌(リクエスト)」「宗右衛門町ブルース」「銀色の道」「雪國(リクエスト)」「また逢う日まで」
聴き手は職員さんを加えて20人ほどで、こじんまりした場である。聴き手の大半は男性で、女性は2名のみ。平均年齢は50歳ほどか。他の似た施設と同様に、曲に対する反応は弱い。曲に対して手拍子や掛け声がかかるのは、大半が職員さんという寂しい状態だった。
歌に対する反応が乏しいのは、歌い手としては正直厳しい。誰も立ち止まる人がいない地下通りの路上ライブで延々歌い続けるような境地だったが、ともかく受けた依頼はこなさなければならず、淡々と歌い進めた。
場が少しだけ湧いたのは、リクエストのあった石原裕次郎と吉幾三を歌ったとき。予想通りリクエストに対する反応は敏感で、これも他施設と同じ傾向だった。
選曲ミスだったのは、「宗右衛門町ブルース」と「銀色の道」。場によっては受ける曲だが、少なくともここではアウト。もし次回があるなら、職員さんとも協力し、より綿密な事前リサーチが必須である。
ともかくも終わって次なるデイサービスのステージへと機材を運んでいたら、手伝ってくれた若い職員さんが、「吉幾三、喜んでましたよ。もっと聴きたいと言っていたんですが…」と残念そうに言う。
意外な言葉に驚いて、「吉幾三のベスト曲はほとんど演れますよ、言ってくれたらアンコールで歌いましたのに」と応ずる。施設として外部ボランティアの受入れは稀らしく、遠慮があったようだ。
初めての場には、歌い手や聴き手、そして職員にも、しばしの慣れが必要のようである。
(後半に続く)
(後半に続く)