経営者が同じ系列の施設で、場所は前回よりさらに4キロ遠く、自宅からおよそ40キロある。
11月中旬の穏やかな陽気で道路状況は改善され、遠方だが交通渋滞の不安はない。問題は一昨日の施設で起こった「歌えど踊らず」の手応えのなさだった。
施設は別でも経営母体は同じで、施設の歴史が浅く、入居者や職員がまだ充分馴染んでいない、という条件も同じ。初めての施設で同じ構成で臨めば、同じような失敗に見舞われる可能性は高かった。
中一日の休息で、何をどう修正すべきか、対策を一心に考えた。前回唯一「受けた」と感じたのは、後半に設けた「二択リクエスト」の仕掛け。
「次の2曲のうち、聴きたい曲をみなさんの拍手で選んでいただきます」という趣向で、ライブにゲーム的要素が加わることで、聴き手が入ってきやすくなるという利点がある。
「次の2曲のうち、聴きたい曲をみなさんの拍手で選んでいただきます」という趣向で、ライブにゲーム的要素が加わることで、聴き手が入ってきやすくなるという利点がある。
どの2曲を組み合わせるか?という難しさはあるが、過去には3曲から選んでもらう「三択」も仕掛けたことがあり、いずれも好評だった。
そこで今回は、この「二択リクエスト」を要所で複数回仕掛けてみようと考えた。
実はこの日は2ヶ所の施設で続けてライブをやることになっていた。同じ系列の施設が2棟隣接しているが、会場の関係で入居者を一箇所に集めることができず、時間をずらして2回連続で演って欲しい、という要望。
今年はこの種の依頼が多く、体力的にはかなり厳しい。しかし、遠方なので何度も通うより、むしろ一日で済んでしまうほうが楽かもしれない、と前向きに考えた。
最初の施設は14時半開始。15分前には会場に着いて14時35分から始め、およそ30分で11曲を歌った。
(※は二択リクエストで、カッコ内は選ばれなかった対決曲)
「北国の春」「おかあさん」「※お座敷小唄(お富さん)」「※ここに幸あり(バラが咲いた)」「矢切の渡し(リクエスト)」「幸せなら手をたたこう」「サンタが町にやってくる(Xmas企画)」「※故郷(さくらさくら)」「※時の流れに身をまかせ」「※夜霧よ今夜も有難う」「青い山脈」
聴き手はおよそ20名ほど。車椅子の方が数人いて、介護度は他2施設よりやや高いとの情報を得ていた。それが関わっていたかどうかは分からないが、1曲目の反応は決して悪くなく、間奏の時点で拍手が湧く。
明らかに系列の前施設とは違う反応で、(このまま普通に歌ってしまおうか…)という考えが一瞬よぎる。しかし、まてまてと考え直し、場がこなれてきた3曲目から、準備してきた二択リクエストを予定通り仕掛けた。
結果は予想を超えるもので、聴き手の反応は上々。二択の組み合わせには「手拍子対決」「唱歌対決」「叙情歌対決」「演歌対決」等々、共通するテーマを設けて選びやすくした。
聴き手の嗜好を尊重する、という姿勢がよかったのか、ライブ途中で突然リクエストが飛び出す、というハプニング発生。職員さんの許可を得て、これにも冷静に対応できた。
結果として4セット5曲の二択リクエストをこなす。(「時の流れに身をまかせ」と「夜霧よ今夜も有難う」は両者拮抗のため、両方を歌う)純粋なリクエストを含め、全体の半分以上に聴き手の要望を反映させたことになる。
介護施設でこれほど多くのリクエストを受けたのは初めてのこと。思いがけない手応えに勇気を得て、ただちに機材をまとめて次なる施設へと移動した。
(後半に続く)