最初に依頼があったのが9年前で、施設の開設直後のこと。以来、年1回ペースで細いが確かな信頼関係が長く続いている。
難しいライブを無事にやり終えた直後なので、心身は疲れきっていた。連続のソロライブはさすがにきつい。できれば中1日の休みが欲しかったが、あくまで先方の都合が優先である。かっては引き受けていた「1日2本のライブ」に比べればまだマシと考え直した。
施設は市の南端に位置するので道路状況に関わらず、自宅から1時間近くはかかる。開始15分前には着いてスタンバイ。14時から施設側のイベントがまずあり、14時15分くらいから始める。およそ35分で12曲を歌った。
「憧れのハワイ航路」「バラが咲いた」「お富さん」「二輪草」「長崎の鐘」「上海帰りのリル」「さくらさくら」「誰か故郷を想わざる」「湯の町エレジー(初披露)」「旅姿三人男」「月がとっても青いから」「東京ラプソディ」
2年前に歌った際、「次は古い歌もぜひお願いします」と頼まれていて、前回はその要望に応えて私が生まれる以前の曲を中心に歌い、大好評だった。入居者の平均年齢が87歳ということで、そうした希望が出るのもうなずける。
そこで今回も同じ傾向で臨んだ。12曲中、新しめの曲は「バラが咲いた」「二輪草」の2曲くらい。他は徹底した懐メロ路線である。
新しい曲を数多く歌う構成も冒険だが、徹底して古い曲を歌うのも別の意味で冒険だった。リスクを避け、1年前に好評だった歌を要所に配置し、計算できない曲はその間に散らすという安全策を講じた。
結果として前回好評だった「長崎の鐘」「誰か故郷を想わざる」「東京ラプソディ」は今回も受けた。初めて歌った「上海帰りのリル」「湯の町エレジー」「旅姿三人男」はいまひとつの反応。他は他施設ですでに実績のある曲なので、期待通りの反応だった。
つまり、ただ古ければよいというものではなく、古い中でも聴き手に訴える何かがないと、手応えは弱いということ。
「湯の町エレジー」と「旅姿三人男」は別の場でリクエストが出た曲だが、だからといってどこでも受けるというわけではない。同じ高齢者でも人によって好みがあり、場によって反応は異なる。曲の選択と構成は本当に難しい。
とはいえ、全体としてライブが好評だったことは間違いない。会場には終始笑顔と拍手、手拍子が絶えなかったし、共に歌う人も多数。終了後には感激した女性入居者から、並んでの記念写真まで頼まれた。
記念写真は昨日に続いてのことだが、私には年に数回あるかないかの珍しいこと。出来がよかったときにしかないことなので、それが2日続けて起きたことを素直に喜びたい。