2016年4月9日土曜日

ちえりあロビーコンサート

 かねてから準備していた「ちえりあロビーコンサート」に出演した。場所は市内西区にある「札幌市生涯学習センターちえりあ」の1階ロビー。
 7年前から月1回ペースで実施されていて、今回が83回目。クラシック系の出演者が圧倒的に多かったが、「多ジャンルの叙情歌シンガー」を前面に押し出し、申込み資料にも工夫をこらしたのがよかったのか、初めての挑戦で何とか審査をくぐり抜けた。

 メールや面会での打合せを何度か繰り返し、事前提出書類も格段に多かった。大規模な公的空間でのコンサートということもあるが、その煩雑さとシビアさは、2013年に出演したクロスロードライブに匹敵するものだった。


 演奏時間は施設の昼休みを利用した12:30〜13:00。こちらも過不足は許されないので、MCこみで正味27分という持ち時間を厳守するべく、事前に提出した曲目リストに従って、何度も自宅リハーサルを繰り返した。
 11時に家を出て、11時40分に会場入り。すでにロビーには100席分の椅子が並べられていて、音響や撮影のスタッフが忙しく動きまわっていた。
 12時からPAのテスト開始。音響専門のスタッフが施設にいないので、音量やリバーブの希望はある程度こちらから伝えた。高い吹抜けがあるので、音の響きはまずまず。しかしモニタースピーカーがなく、メインスピーカーも離れた場所に左右1台ずつしかない。
 歌う条件としては厳しいが、弾き語りシンガーが出演する機会があまりないので、このあたりはやむを得ない。自分の感覚と経験で乗り切るしかない。


マイクテスト中で席はまばら。このあと開始直前になって満席に。

 開始15分前くらいまでは席が1/3ほどしか埋まらず、ちょっと不安になったが、開始直前になって続々と人が集まってきて、あっという間に満席になった。座りきれない人が後方の予備椅子にもあふれ、一部には立ち見も。2階吹抜けテラスにもかなりの人が並んだ。
 予定ぴったりにコンサート開始。初めての場で100人を越す聴き手を前にし、久しぶりにプレッシャーを感じた。ステージが聴き手と同じレベルにあって距離が近いことも、逆に緊張する要因だったかもしれない。

 予定通り、27分で8曲を歌う。

「大空と大地の中で」…フォーク
「野ばら」…クラシック
「愛燦燦」…演歌系昭和歌謡
「ボラーレ」…カンツォーネ
「別れの朝」…洋楽系昭和歌謡
「時の流れに身をまかせ」…演歌系昭和歌謡
「荒城の月」…日本唱歌
「また逢う日まで」…POPS系昭和歌謡
 日頃から「多ジャンル」をウリにしているので、構成には知恵を絞った。内外のバランスや強弱のバランスも偏りがないよう気を配ったが、この試みはある程度成功したと自己評価している。

 歌い始めると、やはりモニターがないことが気になった。自分の声がよく聞き取れず、歌っていて不安になる。
 結果論だが、PAが比較的近い位置にあったので、小型の電池式PAを持参してモニターとして使う手段もあった。


 通りすがりに席に着く方は皆無で、大半が事前の告知を見てコンサートそのものが目的で集まってきた方々だったが、人数の割に会場は非常に静かだった。
 プログラム自体が普段デイサービス等で演っているものとは大きく異なり、いわゆる「聴かせる歌」が大半。聴き手参加型の曲はラストの「また逢う日まで」くらいなので、ある程度予想された反応だった。

 それでも1曲歌い終えるごとの拍手はまずまず。これといったミスもなく、ほぼ予定通りに淡々と歌い継ぎ、あっという間にラストを迎える。事前にMCで聴き手に手拍子での参加をうながし、最後になってようやく会場がにぎやかになる。
 全曲を手拍子系で構成する手法もあったが、それでは事前審査が通らなかった可能性が高い。何せここは「生涯学習」の場である。音楽にもそれにふさわしい静ひつな雰囲気があるはずで、クラシック系出演者が過去に多い背景も、おそらくそのあたりにあるのではないか。
 ともかくも初めての大きな場を無難にこなし、ほっと一息つく。手慣れた介護施設系やチカチカパフォーマンスの場に専念していれば楽だが、それではたちまち冗漫に流されてしまう。
 ただ場数をこなすだけでなく、常に新しいものを目指していきたい。その一点では、非常に意義深いコンサートだった。


 終了後、最前列で熱心に聴いていた40代と思しき女性が近寄ってきて、「素晴らしかったです。ぜひまた歌いに来てください」と握手を求めてきた。さらには並んでの記念撮影まで望まれた。
 モニタースピーカーがないことで、「歌った」という実感に乏しく、期待していたほどの手応えのなさに不安も感じていたが、この見知らぬ女性の言葉に救われる思いがした。

 その後、遠方から聴きに来てくださった知人のS子さん、友人夫婦のOさん、及川恒平さんの同級生Yさんとしばしの交歓。いろいろとお気遣いもいただく。
 今回、ブログ以外での個人的な告知は特にしなかったが、とても嬉しく思った。
 帰りの車中で妻から指摘があったが、途中で一部音が割れる歌があったという。おそらくはモニターがないことによるマイクバランスのミスであろう。
 最もよかったのは「ボラーレ」で、朝方の雨が一転して晴れに変わったこの日の気分によく合っていた、との評価。確かに吹抜けの窓からは青空がのぞいていた。ボラーレ!カンターレ!