今回で6度目の依頼だが、施設にはデイサービス部門のほか、ショートスティや障がい者支援部門なども併設していて、今回はショートスティ部門利用者が対象だった。
開演前に担当者から歌う曲を確認されたが、利用者の介護度が重いので、新しい曲はまず不可。古くてよく知られた曲を中心にして欲しいとのこと。依頼当初は介護度の低いデイサービス部門が対象と聞いていたが、連絡の行き違いがあったらしい。
心づもりしていた構成を急きょ変更することにした。さらには、開始が10分遅れた関係で、演奏時間を5分詰めて25分にして欲しいという。会場ではマジックの真っ最中だったが、転換時間短縮のため、舞台裏手に機材一式を組み立ててスタンバイする。
12時38分くらいにマジックが終わる。ただちに機材を移動し、12時39分からスタート。先方の要望通り、およそ25分で10曲を歌う。
「ジングルベル」「上を向いて歩こう」「北国の春」「お富さん」「ここに幸あり」「小樽のひとよ」「二人は若い」「故郷」「君恋し」「青い山脈」
急な変更だったが、介護施設関連のセットは複数の候補曲をジャンル別にまとめてあり、瞬時の切り替えが可能。どれも介護施設では定番曲の位置づけなので、大きな戸惑いはない。
当初予定していて難しいと判断し、歌わなかった曲は、「二輪草」「いつでも夢を」「荒城の月」「矢切の渡し」「津軽海峡冬景色」「まつり」等々。咄嗟の判断で入れ替えた曲は、「北国の春」「二人は若い」「故郷」「君恋し」「青い山脈」だった。
聴き手は家族を含めて50人を軽く超えていた。事前に充分聞かされてはいたが、聴き手の介護度は確かに重そうで、並べられた食事も家族や職員の介添えでようやくとっている方が多くいた。手拍子や拍手で応ずる人も少なく、進行は困難を極めた。
それでも古い曲にはわずかに反応があり、引率の家族が歌に合わせて励ますように手を添えると、つぶやくように一緒に歌う人もいた。
結果として大きなハズレなく歌い進んだが、唯一外したと感じたのは「小樽のひとよ」。ここは懐メロか童謡を歌うべきだった。
全体的に押していた進行をうまく調整し、希望通り無難に収めて、先方には喜ばれた。打合せとは異なる状況に遭遇することは、ライブではよくある。必要なのは柔軟な対応力だろう。