初めて歌うグループホームだったが、今年最高とも思える盛り上がりぶり。終始笑顔と手拍子、歓声が絶えなかった。そして最後には今年何度目かとなる涙のおまけまでいただく。歌い手冥利につきる時間だった。
帰路、大回りして母の暮らす施設に立ち寄る。あれこれと忙しく、しばらく間隔があいてしまって気がかりだったが、前日に髪を切ってもらったという母は血色もよく、元気にしていた。
恒例となっている「記憶力テスト」をやってみたが、子供の名や自分の誕生日は問題なく思い出せた。自分の生まれた土地や旧姓もOK。しかし、いまの自分の姓がどうしても思い出せない。施設の方針で、職員はすべて名前だけでしか呼ばないので、やむを得ないかもしれない。
「"菊地"でしょうが」と教えると、ああ、そうそう、そうだったねと、ようやく思い出した様子。こんな調子だが、それでも他の入居者に比べると、まだまだ元気溌剌である。
前日に準備したクリスマスプレゼント風の菓子の包みを渡すと、とても喜んでくれた。施設内もクリスマスのデコレーションで飾られ、高齢者にもちゃんと年末年始はやってくる。
さらなる帰路、これまたしばらく顔を出していない都心のカエルヤ珈琲店に寄る。大きな美術展もなく、(カエルヤは近代美術館の真ん前)店内にはカエル好きの客が一人だけ。
クリスマス特別メニューのケーキを注文し、久しぶりにカエル談義に花が咲く。相変わらず落ち着ける店だ。
1時間ほどいて「ごちそうさま」と帰ろうとすると、「菊地さん、どうぞよいお年を」と店主のU子さんに声をかけられた。些細なことだが、なんだか妙にうれしい。こうして今年もユルユル暮れてゆく。