2010年12月20日月曜日

ポリタンク行灯

 先日、ライブハウスの帰り道で、不思議な物体をみかけた。その夜はかなりの雪が降り積もっていたが、歩道の境界あたりに白くぼんやり光る立方体がある。
(なんだろう…)と近づくと、飲食店のサインだった。歩道近くに置いて外部コンセントにつなぎ、店の名前をアピールする「行灯」と呼ばれるサイン表示だ。

 あまり見かけないデザインで、雪の夜道によく目立つ。いったん通り過ぎたが、気になって引き返し、間近でじっくり観察した。


 よく見ると本体は白いポリタンクのようだ。直径10センチほどの大きな蓋があり、そこから電源ケーブルが伸びて壁際の外部コンセントにつながっている。タンクの中にはLED照明が入っているようだ。

 さらに観察すると、側面に表示されている「OPEN」の文字は、ごく普通の赤いビニルテープをていねいに切って加工したもの。正面には店の名前が貼ってあるが、こちらも単なるシールを貼り付けた簡単なものだった。
 推測だが、店主自らがDIYで作ったサイン行灯ではないか。プロに頼めば軽く数万円はする行灯だが、あえて縄文的な手作りにしているところがニクイ。おそらくはそこが店主のこだわりだ。
 店はバーで、表に面するガラス戸からは賑わう店内がよく見えた。自宅の近くなら思わず入ってみたくなる、そんな気配を強く感じた。

 本体がポリタンクだから安くて丈夫で、防水防雪性も抜群。LED電球は維持費も格段に少ないはず。思考がシンプルで、混沌としたいまの世情に合っている。
 調べてみたら、ポリタンクは同型のものがアマゾンで入手可能だった。送料別で990円。たぶんホームセンターでも売っている。「縄文的DIY」の同士は案外身近にいるもので、ちょっとうれしくなった。