パソコンのCADソフトを使い、1ミリ以内の誤差できっちり直線で描くのは得意だが、アナログ的にわざと直線を震わせたように描くのは、CAD本来の機能から外れた描法である。これまで一度もやったことはなく、そもそも確認申請や施工図にそんな図面を提出すると、突き返されかねない。
しかし、今回の依頼主は首都圏の広告代理店。北海道に比べて景気はよいらしく、今年は切れ目なしに依頼がくる。図面を広告に使う場合、そうした特殊なタッチを要求されることはよくあることで、「やったことがない」「出来ない」といった単純な理由でムゲに断るわけにもいかないのだ。
時計は午後7時を回っていたが、9時まで時間をもらった。実はこんなこともあろうかと、暇なときに直線のデータを自在に震わせて描くテクニックを調査、研究してあった。
当時のメモノートをさっそく開き、サンプル図面で試してみる。パラメータをいろいろ変えてやってみた結果、どうにかやれそうな感じがした。夕食後に相手に連絡し、まずはサンプル用図面を1件だけ送ってもらう。一晩で仕上げ、先方の判断を仰ぐことにした。
約束通りに仕上げて明け方に送信したが、その返信が朝8時のタイムスタンプで届いていた。私が寝たころに先方は出社し、できたての図面をチェックしているわけで、ほぼ「夜討ち朝駆け」の世界だが、めでたく一発OKが出た。
その後全16件分の見積りをメールで提出し、こちらにもOKが出て、来週月曜までの納期で全てやることになる。
スケジュールとしてはかなり厳しいが、経験的に似た仕事を続けてやると、尻上がりに作業時間は短くなるもの。「ホトケサマ」の仕事はすでに仕上げて納品済みで、新規の仕事もはや2件目に突入。若いころから仕事は早いのが取り柄だった。
ほぼ山を超えたと思っていた忙しさだったが、一瞬にして次のトンネルに突入した模様。こうして今年も暮れてゆくか。