1番手は30歳前後と思われる若い男女二人組。ボーカルが女性で、ギター伴奏が男性というユニットで、参加のきっかけが女性のグループホームでのヘルパー研修からとか。つまりは介護福祉士の卵である。
ライブ活動を初めてまもないということで、多少の力みも見られたが、一青窈の「ハナミズキ」や、キロロの「未来へ」など、新しい歌に果敢にチャレンジしていた。「クリスマスメドレー」や「見上げてごらん夜の星を」など、場に相応しい選曲の工夫も見られた。
2番手はケーナ演奏のSさん。施設の社会労務を担当してる方で、3度目の参加である。今回はギターのサポートがなく、ちょっと苦戦していたが、童謡メドレーや演歌系の曲など、これまた場への配慮が見られた。
そしてラストが私。いつもはトップを任されるが、この日に限って副ホーム長のAさんが、「ぜひともトリを」との強い要望。事前のプログラムと順序が違うので一瞬戸惑ったが、素直に従った。
演奏者が複数いた場合、聴き手はどうしても比較してしまうが、逆にそれを利用し、自分の特色を強く打ち出すよう心がけた。
予定をかなり変更したが、結果としてこの日歌ったのは11曲。28分のパフォーマンスだった。
1曲目は「ジングルベル」を歌う予定が、最初の若いユニットが歌ってしまったので避け、ひとつ飛ばして「青い山脈」から歌う。当日になって虫が知らせたのか、急きょこの曲にもフットタンバリンを合わせていたので、場は一気に盛り上がった。いわゆる「鳴りもの」であるフットタンバリンの威力はすごい。
早めに歌った童謡唱歌でも、予定していた「赤とんぼ」が、ケーナ演奏のSさんと重複。急きょ「故郷」に差し替えた。以前は重複しても気にせず歌っていたが、経験ある年長者でもあり、可能なら若手に譲るべきだろう。
何度も訪れてよく知っている場なので、この日はいくつか新しい試みをした。初披露の曲は、「ゆりかごの歌」「ピクニック」「白いブランコ」の3曲で、「白いブランコ」は先月の社福協交流会でも突発リクエストで歌ったが、フルコーラスでは初めて。
「ゆりかごの歌」は唱歌なので計算通りだったが、伴奏が冗漫にならないよう、3番だけに初めてミュート奏法を使った。まずまずミスなく弾けたので、今後は実戦でも使えそう。
「白いブランコ」では、間奏のメロディラインをハモニカで演奏した。この1ヶ月、毎日練習し、最近では自己流のビブラート奏法も口だけで吹けるようになったので、こちらも無難にこなした。
「ピクニック」ではフットタンバリンを使用。洋楽なので不安があったが、動物の鳴き声の部分でギターを弾く手を一瞬止め、右手を耳にかざして会場の声をうながしてみたら、ちゃんと応じてくれてうれしかった。
場が水を打ったように静まり返った「夕焼け小焼け」「故郷」の直後に意識的に配置したので、反動でうまく場が乗ってくれた。今後充分に使える曲だと思う。
つい3日前のライブが非常に盛り上がったので、この日は気持ちが守りに入りそうになった。2度続けて当てるのは難しい気がした。
しかし、攻めの姿勢を貫いたのがよかったのか、3日前を上回る会心の出来。この場では珍しく、アンコールまで飛び出した。
「最後の曲にします」と宣言したとたん、「菊地さん、あと2曲聴きたい!」と期せずして声が上がり、急きょこの施設のテーマソングとして作ったオリジナル「のどか小唄」を歌う。
終了後、入居者代表の方から花束をいただく。ちょっとしたことだが、細かい配慮がとてもうれしい。
見知らぬ方が何人も近寄ってきて、握手を求められたり、親しく言葉を交したりした。その中で地元町内会の高齢者ボランティア組織の中年女性から、ぜひ町内会の集まりでも歌って欲しいと頼まれた。
聴けばシャンソンや叙情系の歌が好みとか。別の場でコンサートをやるときは、ぜひ声をかけて欲しいとも言われた。しまいには、過去のライブCD音源を送る約束まで交す。
音楽の同士はあちこちにいるもので、どこに幸運が転がっているか分からない。地域センターでのコンサートが実現したら、まず声をかけてみたい。
音楽の同士はあちこちにいるもので、どこに幸運が転がっているか分からない。地域センターでのコンサートが実現したら、まず声をかけてみたい。