2019年6月29日土曜日

痛恨の遅刻

 先月下旬に初めて訪問した遠方の老健施設から連絡があり、利用者からの強い要望があって、また歌って欲しいという。確かな手応えがあったので、(もしや…)と思っていたが、うれしいリピート依頼だった。
 問題はわずか1ヶ月後という短い間隔であること。どのような場でも短期間に同じ歌い手が続くと、どうしても飽きられる。多くても年2回くらいが程よいペースで、10年を超える長いお付き合いのある施設は、おしなべてこのペースを守ってくれている。
 その旨を施設側に説明したが、「では前回と全て違う曲を歌うということで」と、新たな提案。どうやら歌わざるを得ない雰囲気で、代案として前回歌った際、後半に自然発生で飛び出したリクエストを、今回は積極的に取り入れることを逆提案した。
 利用者の選んだ曲であれば、短い間隔でも受け入れられるのでは?との考え。さっそくリクエスト方式ライブで使っている330曲の曲一覧を先方にFAX送信する。


 開始時間は前回と同じ11時。車で軽く1時間近くはかかるので、10時前には家を出なくてはならない。そのはずだった。
 ところがなぜか開始時間を12時と勘違いし、気づいたときには10時を回っている。あわてて機材を積んで出発し、時計は10時20分。
 前回帰路に選んだ空いているコースを選んだが、どう急いでも11時には間に合わない。15分ほど走ったあとで施設に電話し、正直に理由を告げて遅れる旨を伝えた。

 到着は50分後の11時10分。施設側がゲームで場をつないでくれていて、急いで機材をセット。11時15分から歌い始めた。
 利用者から募った13曲分のリクエストが印刷してあり、ほぼそれに沿った構成で進める。遅刻のせいで予定より5分短い40分で11曲を歌う。(1曲目以外は全てリクエスト)

「憧れのハワイ航路」「サボテンの花」「いい日旅立ち」「ルビーの指輪」「上を向いて歩こう」「知床旅情」「サン・トワ・マミー」「北国の春」「カントリー・ロード」「君恋し」「また逢う日まで」


 前回は30席ほどの会議室が会場だったが、今回はなぜか食堂ホールで歌って欲しいという。聴き手は軽く100名を超えていて、吹抜けの大空間が広がっている。PAが1台では不安があったが、突然のことで準備がない。
 理由ははっきりしないが、自由参加だった前回ライブの評判がよく、急きょ全員参加のイベントに「格上げ」になった可能性がある。
 遅刻による動揺と広すぎる会場への戸惑いがあって、ライブの出来はいまひとつだった。歌に興味がある方だけが集まってきた前回と異なり、聴き手の集中度もいまひとつ。
 前回は1曲目から自然に湧いた間奏の拍手や手拍子も、今回は皆無。会場が広すぎて聴き手とのコミュニケーションもとりずらく、打開策を見いだせないまま、ズルズルと負のスパイラルにはまりこんだ。


 やってみて気づいたが、介護施設での完全リクエスト方式は早すぎたかもしれない。曲の傾向が隔たってしまい、違う曲調で場の転換を図ることが難しいからだ。結果論だが、前半を自分の構成で進め、場が乗ってきた後半に様子をみてリクエストを募るという従来の方式が、やはり無難である。
 事前にもらったリクエスト曲のうち、時間切れで歌えなかった曲は「なごり雪」「夜霧よ今夜も有難う」「柳ヶ瀬ブルース」の3曲。13曲中5曲が前回歌った曲で、(あの曲をもう一度聴きたい…)という聴き手の思いが明確に表れていた気がする。

 自分のミスによる遅刻から始まったトラブルだったが、多忙の中でも出発時間を逆算から確認し、携帯のアラーム設定で間違いを減らすという習慣を怠ってはいけないと痛感した。
 反省ばかりの痛いライブだったが、帰り際に食事の手を休め、「いい歌をありがとう」と声をかけてくれた女性が一人いたのが救い。