娯楽性の強い「弾き語り」ということもあってか、他講座に比べても動員数は悪くないという。1年に3度という依頼回数の多さの背景は、おそらくそのあたりにある。
買っていただけるのはありがたいが、どのような場でも回数が増えるとマンネリ化のリスクがつきまとう。今回は時期がクリスマスと重なって構成を絞り込みやすく、その点では恵まれていた。
ライブの概要は事前に地域で回覧されていて、「クリスマスと愛の唄」と題し、リクエスト一覧から選ばれた8曲がプログラムとして予告されていた。
ライブ時間は1時間30分で、前半40分を予告プログラムで構成し、休憩をはさんだ後半40分をリクエスト中心で歌うという進行が恒例だった。
開始は前回と同じ10時。声の出にくい午前中ライブで、珍しく7時に起きた。幸いに雪も降らず、寒さもほどほど。車の流れはスムーズで、夏と変わらぬ45分で会場の町内会館に着く。
会場が広いので、PAはいつも2台準備する。不測の事態に備え、ギターも2台持参した。機材としてはフル装備だ。
真冬に歌うのは初めてで、日常的に使われていない町内会館は寒いことが予想されたので、タイツと裏地つきの暖かいズボンで備えた。
開始まで40分の余裕があり、ゆっくり準備して10時ちょうどにスタート。前半は40分で11曲を歌った。
(事務局の選曲に過去リクエストを加味)
(事務局の選曲に過去リクエストを加味)
「ウィンター・ワンダーランド」「恋心」「骨まで愛して」「恋の片道切符」「愛の讃歌」「氷雨」「地上の星」「バラ色の人生」「聖母たちのララバイ」「雪國」「クリスマス・イブ」
喉の不安はなかったが、睡眠時間が普段よりも短かいせいか、身体がまだ半分眠っているような状態。そのせいか、声量にいまひとつ迫力がないように感じた。練習時間の蓄積が足りず、アルペジオの曲で左手の押さえが時折甘くもなる。
やや守りの進行となったが、50名近く集まった場の反応は決して悪くなく、「恋の片道切符」では自然発生の手拍子が湧いた。特に前半でMCを長めにしたのがよかったのかもしれない。
11曲のうち洋楽系が5曲を占めたが、クリスマスが外国のお祭りなので、ある程度はやむを得ない。
「氷雨」「雪國」はプログラムになかったが、過去2回のライブでリクエストが出ていて、歌い残した曲。「冬にちなんだ愛の唄」ということで、テーマにも沿っている。演歌なので全体のバランスをとるにも絶好だった。
10分の休憩をはさんで後半開始。シングアウトを含め、およそ43分で12曲を歌った。(全てリクエスト)
「ワインレッドの心」「吾亦紅」「恋人よ」「酒よ」「酒と泪と男と女」「時代」「人生一路」「ダニーボーイ」「涙そうそう」「雪が降る」「青春時代」「この広い野原いっぱい(シングアウト)」
暖房がじょじょに効いてきて身体が温まり、前半に歌いこんだこともあってか、声量の不安は消えた。それに応じて、場の反応はさらによくなる。聴き手は実に正直なものだと、いつも思う。
「吾亦紅」は3名の方のリクエストが重なった。他の場でも似た傾向にあるが、この曲の人気は根強い。個人的には苦手な歌だが、聴き手の反応はなぜかよく、今回も終了後に中年男性から「あの曲で涙が流れた」と声をかけられた。
フォーク系のリクエストが6曲と多い。演歌系は3曲で、前半に連発した洋楽系は2曲に減った。昭和歌謡系は1曲と少ない。(「吾亦紅」は演歌系とした)
介護施設系の場ではないので、フォーク系は好まれる傾向にある。このことは頭に入れておきたい。
いい調子で歌い進んで、ラストの「青春時代」で大団円のはずだった。ところがここで、予想外のトラブルが発生した。前奏が終わってワンフレーズ過ぎたあたりで、右手に奇妙な違和感。そう、弦が切れたのだ。しかも旋律の中心となる4弦(上から3番目)ではないか。
予備ギターは手元に置いてあったが、運悪く時間が押していて、やり直す余裕がない。ストローク系の曲なので、5〜6弦を強めに弾くことでなんとかごまかし、ラストのリフレインも省略してそのまま歌い切った。
最後にカフェのテーマ曲を歌詞指導しつつ歌ったが、事情を説明してすばやくギターを交換。間の悪いタイミングで弦が切れたが、ダメージは最小限で済ませた。長時間の場では、やはり予備ギターの準備が必須である。
リクエストで歌えなかった曲は、「終着駅」「つぐない」「神田川」「今日でお別れ」「希望(岸洋子)」など。
「希望」はレパートリーになく、他は一人からの複数リクエストによるもの。リストのトップ曲には応えたで、よしとしたい。
この日は午後からも自宅近くのグループホームで歌うことになっていた。移動には50分をみておく必要があり、終了後ただちに撤収作業に励んでいたら、こんな日に限って何名もの方が近寄ってきて声をかけてくれた。
内訳は女性1名男性4名で、普段と全く逆の傾向。聴き手全体としては圧倒的に女性優位だったが、こんなこともある。
ある男性からは「とてもセクシーな歌でした」と、声をかけられた。実は「セクシーに歌う」ことは日頃から心密かな目標にしていたが、期せずして声をかけられたのは今回が初めて。私にとってはうれしい賛辞なのだった。
あれやこれや応じているうちに時間がどんどん過ぎ去り、次なる場をめざして出発できたのは12時ちょうど。「午後のなるべく早い時間に」という要望に応えるべく、空腹を抱えつつも事故を起こさぬよう、慎重に車を走らせた。(続く)