2015年12月6日日曜日

定番曲の落とし穴

 このところ、特に介護施設系ライブの再依頼が急増している。「同じ場でのライブは年に1回」をかねてからの方針にしているが、多い施設ではその回数が年4回に及ぶ。さすがにこれは多すぎないか?
 ライブ間隔を空けるのは、要するに飽きられるからだ。人間は基本的に「飽きる」動物で、たとえ演奏者が一流のプロであっても、毎度毎度では飽きてしまうのが常。「仏の顔も三度まで」とはよく言った。

 プロの場合は生活がかかってくるので、ライブの構成を変えたり編成を変えたりし、目先を変えて臨む。しかしそれでも同じ場でとなると、年に数回までが限度ではないか。
 一介のアマチュアといえど、この「飽きられる」という構図は立派にあてはまる。同じ場でもデイサービスのように利用者がガラリ変わる場合は比較的問題ないが、利用日を越えて聴きにくる方もいるので、やはり対策は必要だ。
 私の場合、ソロに強いこだわりがあるので、編成は変えようがない。残るは曲の構成を変えるしかなく、季節ごとに内容を更新することでどうにか凌いでいる。


 リピート依頼があまりに多いので、いくつかの施設担当者にその理由を尋ねてみた。すると、「菊地さんは、他のボランティアさんと少し違う曲を歌ってくれる」との返答。日々の創意工夫が認められたようで、ちょっと嬉しかった。

 特に介護施設系ライブの場合、いわゆる高齢者に圧倒的に支持される「定番曲」というものが明らかに存在する。
 思いつくままに挙げると、「北国の春」「青い山脈」「リンゴの唄」「高校三年生」「知床旅情」「川の流れのように」「丘を越えて」「憧れのハワイ航路」「上を向いて歩こう」「ふるさと(唱歌)」「花笠音頭」等々。

 ボランティア演奏に臨む場合、これら定番曲の習得は必須と思われるが、ハマりやすいのは、「定番曲さえ並べておけばOK」という安直な考え。極端な場合、毎回ほとんど同じ構成で臨む演奏者もいて、さすがに忘れっぽい高齢者でも、(またこれか…)と心中では思っているかもしれない。
 イベントで複数のボランティアが登場する場合、2曲も3曲も同じ定番曲が重なることがあり、曲目に対して事前調整の余裕がない施設側は、もはやお手上げである。
 あくまで私の場合だが、同じ場では直前の回での曲重複は極力避けるし、万一他の演奏者と曲が重なった場合、その場で別の曲と差し替える。
 定番曲が全くない構成も寂しいので、2〜3割くらいの比率で要所に定番曲を入れ、他は重複しにくい昭和歌謡系の曲を最近は選んでいるが、聴き手の反応は悪くない。

 カラオケの普及が進み、介護施設利用者に団塊の世代がチラホラ見かけるようになってきた。かって介護施設ではタブー視されたフォークや洋楽、オリジナルのリクエストも時折飛び出す。
 時代はめまぐるしく変化している。そんな流れに、ボランティア演奏も柔軟に対応すべきではないか。