2015年7月14日火曜日

バナナな話

 大腸ガンを患って以来1年7ヶ月、再発や転移のリスクを極力減らすべく、食生活には大幅な改善を試みている。アルコール、赤肉、脂質を減らすのが主な柱だが、その一環として朝食のマーガリンをやめ、トーストには蜂蜜とバナナを載せて食べるのが新しい習慣になった。
 先日、私と同じ病気を患って同じように食生活の改善を試みている鳥越俊太郎氏が、朝食に蜂蜜とバナナを取り入れていることをテレビで知り、(おお!同士)と共感を持った。

 朝食に欠かせないそのバナナが、いまや昔のように高級品に変貌しつつある。昨年まではどの店でも4〜5本100円程度で買えたのが、いつの間にか128円になり、いまや5本で200〜300円が普通。あっという間に2倍3倍に値上がりという凄まじさだ。
 食生活が向上した中国での需要増と、円安のダブルパンチがその原因。毎日のことなので、自他共に認めるビンボー人にとっては家計に響く。


 あちこちの店で調査した結果、現時点で最安値はイオン系スーパーのビッグ。一人3個までの制限はあるが、4〜5本で常時97円(税込)で店頭に並んでいる。
 おそらくは原価ギリギリか、もしかすると原価割れの目玉商品。それでもこのバナナを買うために、定期的に近くのビッグに通う。
 この店に限らず、バナナを買う人間のマナーが、まるでなっていない。平日の昼という時間帯がそうさせるのか、多くは私と同年代かそれ以上の中高年が買い手。そして例外なくバナナをいじくりまわし、選別する。
 高級品ならいざ知らず、たかが100円程度の品を、なにゆえそこまで選び抜くのか理解に苦しむ。本来は若い世代の手本になるべき中高年世代が率先してやっているのだから、何をか言わんや。

 かってスーパー等で野菜果物コーナーに勤めていた妻がいうには、特にバナナはいじられればいじられるほど、品質が悪化してしまうそう。いじくり回されて黒く変質したバナナが、時折半値で売られていたりする所以だ。
 バナナの保存には独自の工夫をこらしているが、それでも房の最後に近づくと、写真のように指でいじくり回された黒い斑点が浮く。腹立たしい限りだ。
(どうせ金を払うのだから、少しでも大きくて品質がよいものを)というのが、いじくり回す側の心理的背景だろう。他の客や店側の都合など、かまっちゃいない。突き詰めれば、(自分さえよければいい)というエゴ心理だ。他からの視点が、ぽっかり欠落している。
 その心理は、(原発はイヤだけど、便利な生活は捨てられない)とか、(戦争はイヤだけど、景気がよくなって収入は増えて欲しい)という心理と、どこかでつながっている。

 不条理な現代ニホンの世情を根底でしっかりと支えているのは、他ならぬ庶民のエゴ心理。たかがバナナの選び方ひとつにも、それが如実に現れている。病巣は限りなく深い。