2014年9月12日金曜日

場が歌を後押し

 自宅から車で20分ほどの近くにあり、1年前にネット経由で依頼されたデイサービスから再び招かれ、敬老会ライブで歌ってきた。いわゆる「最も強い2度目の依頼」だが、行ってみると依頼時とは担当者が変わっていて驚いた。
 聞けば先週辞めたのだという。出掛けに出演時間確認の奇妙な電話が施設からあり、不信に思っていたが、そんな訳だったとは。
 幸いに引き継ぎは行われていて、予定通り13時15分からライブは始まった。
 聴き手は13名で、職員が3名。デイサービスの規模としては小さい部類である。前回の記録を参考に準備したが、他と比べて突出した特徴は、「男性の比率が高い」ということ。
 介護施設の一般的な特徴として、女性の比率が高いことが挙げられる。およそ70〜80%は女性で、全員が女性という施設も少なくない。女性は寿命が長いことのほか、集団生活への順応性が高いことが背景にあるのではないか。


 今回も13人中7人が男性。基本的に女性中心に構成を組み立てているので、男性にも配慮するとなると、これがけっこう難しい。叙情歌系の比重を減らし、男性受けする演歌系の曲を多めにして臨んだ。
 まず30分ほどで12曲を歌う。

「憧れのハワイ航路」「お富さん」「おかあさん」「おふくろさん」「炭坑節」「二人は若い」「バラが咲いた」「浪花節だよ人生は」「さざんかの宿」「高原列車は行く」「星影のワルツ」「月がとっても青いから」
 最初の数曲は場のノリがいまひとつで、苦戦した。1週間前のグループホーム秋祭りでの悪夢が蘇る。今回は食事など、他に気を取られる要素はないので、MCで盛んに声かけをし、何とか自分のペースに持ち込もうと腐心した。職員さんにも手拍子などでの、具体的な応援をお願いした。

 場がようやく乗ってきたのは、意外にも叙情系の「バラが咲いた」から。数は少ないはずの女性の反応がよく、ここから徐々に雰囲気がよくなってきた。あまり男性女性を意識せず、得意な叙情系の曲は随所に散りばめよ、という教訓だろう。


 最初は大人しかった男性も積極的に声をかけてくれるようになり、私もすかさずそれにアドリブで応じた。(この種の場で、おしなべて男性は大人しい)
 開始前にいくつかリクエストが出ていたので、予定曲をひと通り歌ったあと、アンコールをかねたリクエストタイムとした。およそ20分で合計6曲を続けて歌う。(※はリクエスト)

「川の流れのように※」「矢切の渡し※」「皆の衆※」「酒よ※」「青い山脈」「サン・トワ・マミー※」

「美空ひばりを何か」「村田英雄をぜひ」というリクエストがまずあり、最初に「川の流れのように」を歌ったとたん、別の女性が「《矢切の渡し》を聴きたい」と、突然の要望。3曲を無難にこなしたあと、ラストに「青い山脈」を全員で歌って締めようとすると、盛んに声をかけてくれていた男性から、「吉幾三の《雪國》か《酒よ》を歌って」と、これまた強い要望。
 施設側に時間を確認すると、14時を多少越えてもOKとのことで、電子譜面で検索しやすかった「酒よ」を歌う。

 およそ2年ぶりだったが、これがなぜか非常に気持ちが入った。場がぐんぐん寄ってくる確かな感触があり、後押しされるように、フルコーラスを歌う。歌い終えぬうちに万雷の拍手で湧く。
 理由は定かではないが、「請われると乗る」という本能のようなものが作用したか。
「青い山脈」を歌い終わり、やれやれと撤収にかかろうとしたら、女性のヘルパーさんから、「アンコール!」の信じ難い声。さすがに虚を突かれた思いで、一瞬たじろいだ。時計は終了予定の14時をすでに回っていたし、ここまで17曲を歌って、リクエストをかねたアンコールも終わったつもりでいる。
 しかし、「利用者さんを意識しない、菊地さんが本当に好きな歌を1曲聴きたい」と、ヘルパーさんは言う。フォークかシャンソンか一瞬迷ったが、ここは洋楽を選択。曲目を告げると、何とそれまで大人しかった利用者の女性が、越路吹雪のファンだと歓声をあげる。こんなふうに、うまく運ぶときは、なんでもいいほうに働く。

 終了後、「予想を超える素晴らしさでした」と、新担当の方からも労われる。歌は歌い手だけでなく、聴き手や場を管理するスタッフも含めた三者が一体となったき、より強いパワーとなって結集するものだと再認識した一日。