2014年7月7日月曜日

気ままにチカチカ

 7月最初、そして第6期本当のラストとなるチカチカパフォーマンスに参加した。チカホが7〜9月の期間「札幌国際芸術祭」の会場となるため、先月末が最後のはずだったが、月始めのわずかな期間限定で、広場の割当て枠が追加になった。
 月に2回は参加したいと常々思ってはいるが、あいにく先月末から時期外れの腰痛に見舞われ、なかなか完治しない。割当て枠は明日までだったが、ぎりぎりになってようやく回復の兆しがあり、前日午後になって急きょ参加を決めた。

 この日は慣れない北3条広場だったが共演はなく、その分自由に演れる。夕方に待合せ予定が別にあったので、それに合わせて開始はいつもより30分遅らせた。
 すでに準備が始まっているのか、広場の南側は壁が取り払われ、シートで覆われている。中では工事が進んでいる気配。あちこちで物音がし、どことなく落ち着かない雰囲気なので、この日はシートに背を向ける形で、正面から30度ほど北に向かって歌うことにした。


 さて歌いだそうかと準備していたら、目の前に手を振って現れる女性。よく見ると、チカチカパフォーマンスを管理しているNPOの代表、Tさんではないか。まさか視察?と一瞬いぶかったが、ちょうど電話が入ってしまい、会話が進まない。構わず14時30分から歌い始めた。
(◎=初披露、※=リクエスト)

「ブルージーンと皮ジャンパー◎」「ラストダンスは私に◎」「ドミノ」「セ・シ・ボン」「オー・シャンゼリゼ」「知りたくないの※」「雪が降る※」「End Of The World※」「バラ色の人生」
 第1ステージはシャンソンで臨むこと、そしてなるべく早い時間に初披露の曲を歌うことは事前に決めていた。2曲目の「ラストダンスは私に」で人が一気に集まり、その中に電話を終えたTさんの姿も見える。
(3曲目あたりでふっと消えたので、視察であったか否かは不明のまま)
 聴き手の出入りは激しかったが、ずっと熱心に聴いていた中年女性が途中で声をかけてきて、「菅原洋一さんみたいな歌唱ですね」という。菅原さんの歌、歌えますよと応ずると、ぜひにとの要望。歌詞がすぐに見つけられる「知りたくないの」を歌った。

 その後、その女性と歓談しつつ進めたが、この春から昭和歌謡系のカルチャー教室に通っているそうで、歌は下手だが、聴くのは大好きとのこと。昭和歌謡も演りますが、と再び応ずると、いやいや洋楽のアダモをお願いします、できれば「雪が降る」をぜひに、と思いがけないリクエスト。
 夏に雪が降るのも涼しくていいですねと、こちらもただちに歌った。
(電子譜面にはシャンソンのファイルを設定してあったので、検索は瞬時)
 中年女性は去ったが、始めの頃からずっと熱心に聴いていた別の若い女性がいて、動こうとしない。声をかけると、どうも洋楽系の歌が好きらしい。もしや弾き語りをやっているのでは?と思って確かめると、実は母が長くギターの弾き語りを演っているのです、と応える。
 好きな歌手はカーペンターズだが、曲名は分からないという。こちらの判断で「End Of The World」のオリジナル訳を歌うと、まさにそれが母のレパートリーだと喜んでくれた。私のは日本語訳だが、いつも聴くのは当然ながら英語版。そこで続けて英語版もさわりだけ歌ってあげた。

歌い手からは、通りがこんなふうに見えている

 30分歌って、15分ほど休憩。体調は万全ではないが、声はまずまず出る。15時15分から昭和歌謡系の曲を中心に、第2ステージを始める。

「勝手にしやがれ ◎」「ジョニィへの伝言」「グッド・バイ・マイ・ラブ」「どうにもとまらない」「カサブランカ・ダンディ」「花~すべての人の心に花を※」「涙そうそう※」「青葉城恋唄」

 第1ステージに比べて人の集まりは悪かったが、「どうにもとまらない」で一人の男性が近寄ってきて、熱心に聴いてくれる。そのうち、「沖縄の曲を何か歌ってくれませんか?」とリクエストが出た。
 珍しいパターンのリクエストだったので、もしかして沖縄の方ですか?と問うと、沖縄県人ではないが、沖縄の歌がとても好きなのだという。「叙情歌」のファイルに入っている「花」と「涙そうそう」を歌うと、ずっと一緒に口ずさんでくれた。
 2ステージ終えて時計は15時45分。打ち切ってもいい頃合いだったが、待合せは16時半。まだ余力は充分にあったので、15分休んで16時から第3ステージをやることにした。

「ボラーレ」「夕凪ワルツ(オリジナル)※」「神田川※」「ブンガワン・ソロ※」「砂に消えた涙」「死ぬほど愛して(オリジナル訳詞)◎」「傘がない※」「夢一夜」

 第3ステージは「世界の音楽」を切り口に歌おうかと漠然と考えていたが、決めていたのは1曲目の「ボラーレ」のみ。この日は他に共演者がいないということもあり、普段のように歌う曲を事前に選ばずに、ステージの大枠と1曲目だけを決めておいて、あとは場の流れに任せるという自由なスタイルを初めて採ってみた。

 その1曲目の「ボラーレ」で、いきなり初老の男性が近寄ってきて、間近で熱心に聴いてくれる。終わると話しかけてきて、オリジナルをぜひ聴きたいという。中高年に人気の高い「夕凪ワルツ」を歌うと、気に入ってCDを買ってくださった。
 その後、雑談の中で「こうせつに声似てるよね、何か歌って」となり、「神田川」を歌う。洋楽路線からは外れたが、これも場の流れ。「最後にもう1曲」となり、3年前にこれ歌ってオーディション合格した曲です、と「ブンガワン・ソロ」を歌う。
 これで男性は去り、さてどうしたものかと、ひとまず洋楽譜面に戻って目についた「砂に消えた涙」を歌い始めると、今度は別の若い女性が現れ、熱心に聴いてくれる。この日は入れ替わり立ち代わり熱心な聴き手が次々と登場するという、実に不思議な一日だった。
 この女性とも雑談を交わしながら歌い進めたが、「砂に消えた涙」が好きだというので、てっきりカンツォーネファンかと思いきや、実はフォークも好きだという。30代に見えたが、拓郎か陽水を何か、というので、得意の「傘がない」を歌うと、別の人も集まってきて、けっこう盛り上がった。相変わらず強い曲である。

 途中、あちこち脱線しつつも、2時間ちょうどで3ステージを無事に歌い終える。「行き当たりばったり」という初めてともいえる形式で演ってみたが、自ら積極的に働きかけたこともあって、聴き手との交流という一点では非常にうまく運んだ。
 リクエストを受けて思ったのは、人の好みは実に千差万別であるという単純な事実。「私はこのスタイル」というこだわりも理解できるが、少なくともチカチカパフォーマンスのような開かれた場では、どのようなニーズにも対応できる、柔軟な態勢が必要のようだ。

 応じたリクエストは過去最大の9曲。全体の1/3強にも達し、特に準備せずとも、レパートリーにある曲ならそれなりにこなせるという自信もついた。
 共演者がいる場合、そう気ままには演れないが、自由度の高いソロステージなら、たぶん次回以降もこのスタイルはある。新境地を開拓した気分。