車で15分ほどの距離にあるデイサービス夏祭りで歌ってきた。依頼は2ヶ月前にネット経由であり、先方はすでにブログ等でセルフレポを詳細に読んでいる様子である。
開設後数年で、まだ一度もボランティア演奏の類いを頼んだことはないが、1週間にわたる夏祭りの計画があり、その中でぜひ歌って欲しい、との内容だった。
あいにく先方の希望する夏祭り初日は、すでにシルバー大学音楽講師のスケジュールで埋まっていた。数度のメールやり取りのあと、シルバー大学終了後に中2日あけ、翌週の月曜火曜の2日間連続で歌わせていただくことになる。
初めての施設なので、用心して事前に現地調査に行った。新築間もない垢抜けしたデザインの施設で、会場となるホールが屋根まで吹き抜けになっている。いかにも音響効果がよさそうな印象がした。
PAは大型のCM-30を使うことを即断。ステージの位置や椅子の配置、進行や選曲の打合せを、その場で済ませる。
当日は開始20分前の14時40分に到着。予定通り15時ちょうどから歌い始め、およそ40分で、以下の14曲を歌った。
「憧れのハワイ航路(リクエスト)」「お富さん」「アロハ・オエ」「知床旅情」「リンゴの唄」「二人は若い」「バラが咲いた」「浪花節だよ人生は」「われは海の子」「高校三年生」「星影のワルツ」「月がとっても青いから」
…「青い山脈(リクエスト)」「矢切の渡し(リクエスト)」
事前に先方から出た要望は、1曲目に「憧れのハワイ航路」を歌うことだけ。実はこの曲は施設名にちなんだ曲で、毎日開始時に必ず全員で歌っているという。
いざ歌い始めると、いきなり手拍子と共に、ヘルパーさんや利用者の方による「振付け」が始まる。あとで聞くと、体操をかねたオリジナルの振付けをつけて歌っているそうだ。なるほど。
聴き手は職員さんを含めて40名弱。会場の天井高が程よく、予想通り抜群の音響効果。初めての施設で選曲も含めて手探りで進めざるを得なかったが、事前調査による印象から、ニギヤカ系の曲を多めに選んだのは正解で、終始手拍子の飛び出す楽しい気分でライブは進んだ。
会場の雰囲気がさらに盛り上がったのは、6曲目の「二人は若い」から。歌詞に登場するかけ声の返答を、聴き手にアドリブでやってもらうという、「聴き手参加型」の希少な曲だが、「あな〜た」との呼びかけに、聴き手とヘルパーさんが大喜びで返答。ついには踊りながらステージ前に飛び出す人まで現れた。
こんな盛り上がりはそう滅多にあるものではなく、こうなればさらに乗ってもらうのが得策。
「どうぞ遠慮なくステージ前で踊ってください」と声をかけると、以降の曲には全てヘルパーさん5人によるアドリブの即興ダンスがつく、という事態になった。
私自身はダンスのバック演奏のような立場になり、「じっくり聴いてもらう」という雰囲気からはやや離れたが、主役はあくまで利用者のみなさん。楽しんでもらえれば、それでいいのだ。
およそ35分で当初の予定分12曲を歌い終える。その後、アンコールをかねたリクエストタイムとなったが、飛び出した5曲のうち、譜面の準備があった2曲を歌う。
ちなみに、応えられなかった3曲は、「旅の夜風」「誰か故郷を想わざる」「さざんかの宿」で、このうち「旅の夜風」「さざんかの宿」は、帰宅後さっそくレパートリーに加えた。こうした素早い地道な対応が、実はあとで効いてくるのだ。
終了後、多数の利用者の方から「楽しかった〜」「知っている歌ばかりでよかった」との声。施設長さんを始めとする職員さんからも、大変喜ばれた。
この日の収穫は、聴き手とヘルパーさんの両方と、うまくコミュニケーションをとりつつ進められたこと。会話形式のMCに大きな比重をさばいたシルバー大学講義での経験が、無駄にはなっていないことを知った。
明日は同じ場所で同じ時間にライブがあるが、セットリストも実は同じである。デイサービスは多い方でも隔日利用なので、曜日が変わると、利用者もガラリ変わる。聞けば、ヘルパーさんも全員が代わるらしい。同じ曲構成でも、何ら問題ないのだ。
ひょっとすると今日とは全く違う反応があるかもしれず、怖さ半分、楽しみ半分の気持ちだ。