2014年7月27日日曜日

挨拶しない

 初めて参加するライブイベント、初めて訪れるライブハウス等で、共演者とどう接するか?というヤッカイな問題がある。
 ライブハウスやそれに近いお店の場合、たいていは店主の方と面識があるから、店主が互いを紹介してくれるので、頭を悩ますケースは少ない。
 
 問題は一回こっきりのライブイベントの場合だ。イベントへのエントリーはメール等で行われるケースが大半で、主催者に実際に会うのはイベント当日。担当者は運営に忙しく、共演者相互の紹介など全く関わらないし、関われない。
 多くの場合、開始時間の30分ほど前までには楽屋(控室)入りするが、このときに複数の共演者が、初めて顔を合わせることになる。さて、このときに参加者はどうするか?どうしたらいいのか?


 ここからは私の個人的考えである。私の場合、真っ先にやるのは、見知らぬ共演者(稀に知っている方もいるが)への「挨拶」である。
 キャリアや実績がどうとか、年齢がどうとか、所属はどうとか、プロだアマだとか、そんなことはどうでもいい。この日この時、たまたま同じイベントに居合わせ、同じステージで演ずるのだ。(互いに気持ちよく演りましょう)そんなメッセージをこめて、すすんで声をかける。

「こんにちは、ギター弾き語りの◎◎です。よろしくお願いします」
 相手はたいてい私よりも若く、もしかすると実績とやらも、私なんぞよりも遥かに上なのかもしれない。それでも声をかけ、頭を下げる。
 欧米を中心とする狩猟民族社会では、見知らぬ人と出くわした場合、相手に敵意がない証として、まず互いに微笑んで挨拶を交わしたという。私の心中は、それに近いものがあるかもしれない。

 ところが、それに全く応じない相手がけっこういて驚く。特に書類選考での一次オーディションを通過し、ファイナリストを絞り込むようなイベントの場合、共演者がすべて「敵」とでも思っているのか、(そうした側面は確かにあるが)こちらの挨拶に全く無言無視か、ひどい場合は意図的にソッポを向かれる。

 まあ、そんな場面に遭遇してもそれ以上深入りはしないが、最終選考結果と挨拶の有無には、実はあまり関係がないように思える。きちんと挨拶を返す人がファイナリストに選ばれたり選ばれなかったり、その逆のケースも当然ある。
 自分以外の相手を敵視しようがしまいが、結果には無関係なのである。
 日本でもトップクラスの輝かしい実績を持つミュージシャンの方と、親しく言葉を交わしたことがあるが、たまたまこの「挨拶」の話になった。
 その方いわく「満足に挨拶ができないミュージシャンは、決して一流にはなれない」と断言した。そんなケースを数多く見聞きしているという。
(ちなみに、その方は一流でも大変に頭が低く、なるほどと納得させる言葉の重みがある)

 ではその逆は真か?というと、そうはならないのが、この世の不条理なところ。つまり、「どのような場でも周囲にきちんと挨拶ができるミュージシャンが、必ずしも一流になれるとは限らない」のである。挨拶は一流になるための必要条件かもしれないが、十分条件ではないということ。
 しかし、人はミュージシャンである前に、まずはフツーの社会人であるべきではないだろうか。一般人として通用しないニンゲンが、一流には決してなれないのだとすれば、それは極めて道理にかなったことではないのか。