主催は以前から交流のあるボランティア仲間のTさんで、1年前にも同じ場所で同じような企画があり、やはり参加している。
今回は私とTさん以外の出演メンバーが変わった。すべてTさんを軸とする交友関係だが、開演の1時間半前に会場に入り、椅子席の設営を手伝いつつ、互いに挨拶を交わす。
椅子はひとまず42席分を並べた。「そんなに来ないと思う。これで充分だよ」というTさんだったが、温暖な天気で、交通の便もよい。万が一足りなくなることを想定し、私の助言で予備の10席分を会場の隅に置く。
(結果的に大半の予備椅子を使った)
開演5分前の13時55分に出演者が入場。Tさんが開演宣言し、出演者を順に紹介した。ただちに1番手の三田ファミリーによるアフリカ太鼓から開始。定刻より2分早いが、席はすでに8割方埋まっていたので、許される範囲だろう。
家族4人でアフリカ太鼓を叩きつつ、リズム楽器のみでアフリカ民謡を歌うという、非常に変わったスタイル。ボーカル担当の女の子は、まだ3歳くらいの年頃だったが、臆せずにスワヒリ語(?)で堂々と歌いきり、会場を湧かせていた。
さらに驚くべきことに、ベースドラム担当の奥様の背中には、生まれたばかりの赤ちゃんが。廃校に住みながら農業をやりつつ、日々音楽を続けているそうで、大地に根ざした確かな音楽の原点をそこに見た気がした。
2番手は影絵の福地さん。演目はアイヌ民話を元にした「エタシップカムイ」。色がついていて、3D的な動きもある、これまた不思議な世界が展開されていた。
影絵のオペレーターは娘さんだそうで、こちらも母子によるパフォーマンスである。さすがに朗読とオペレーションの息はピッタリ合っていた。
3番手が私。多忙で事前のPAの打合せに参加できず、やむなく手持ちのPAと100Vバッテリを持参した。いつでもどこでも自分のペースで音を出せるのが強みだが、ホールの天井が思っていたより高く、ややパワー不足であったかもしれない。
影絵が予定より早く終わったので、予め壁際にセットしてあったPA一式をすばやく移動。14時49分から歌い始める。この日はいつもと少し趣向を変え、洋楽系の曲を中心に6曲をまず歌った。
「アメイジング・グレイス」「ろくでなし」「ケ・セ・ラ・セラ」「知りたくないの(初披露)」「熱き心に」「雪が降る」
持ち時間よりやや短い26分ほどで終えたが、実は開演前に主催のTさんから、「菊地さん、今日はぜひ島倉千代子を歌って欲しいな」と、突然の要請があった。寝耳に水だったが、幸いに2日前に覚えたての「人生いろいろ」を歌ったばかり。電子譜面の準備もある。歌うことに支障はなかった。
問題は全体の構成の中で、どう配置するかだった。出だしで演って欲しいとTさんは言うが、洋楽中心の1曲目に、演歌色の強い曲は馴染まない。協議のすえ、「セルフアンコール」の形で最後に歌うことで決着した。
そんな顛末も率直に会場に説明してから歌った。この日は終始静謐な雰囲気が場を支配していた。1番手のファミリーバンドが賑やかな気分を作っていたので、その反動もあったかもしれない。しかし、各自さまざまな色があってよいのだ。
私のあとの4番手が主催のTさんによる一人朗読劇。演目は以前にスーパーの市民広場でご一緒した際に初めて見た民話紙芝居「うずら」。今回はこれを紙芝居なしの朗読のみでやろうという新趣向だ。
切り口が講談や落語にやや近く、これまた不思議な気分を演出していた。
15時45分に全パフォーマンスが終了。最後に私のリードで会場全員で「故郷」「青い山脈」をシングアウトした。歌詞カードの準備はなかったが、どちらも今年になって別の場で「歌詞指導つき歌唱」という形で歌ったことのある曲。アフリカ太鼓の三田さんもアドリブで参加してくれて、無難にこなした。
予定より10分早い15時50分で終了。この日は私の知人も4人足を運んでくださったが、初めて私の歌を聴いた同年代の男性から、「とても感動しました」と、ありがたい感想をいただく。
4組のパフォーマンスが程よくバラけていて、個性あふれる空間を作っていたと思う。楽しい時間だった。出演者を巧みにコーディネートしたTさんに感謝したい。