前回の手応えは決して悪いものではなかったが、同じ場で続けざまのライブは禁物であることは、過去の例から思い知っている。打診のあった当初は、丁重にお断りするつもりでいた。
しかし、予定していた別の出演者に突然のキャンセルがあったとかで、ぜひにとの要望である。幸いに季節は夏から秋へと切り替わっていたので、全曲を差し替えることを前提に受諾した。
悪条件がもうひとつあり、前回は11時20分開始だったが、今回は1時間以上も早い10時開始。3組の出演者の一番手で、苦手な午前中ライブ。あくまでピンチヒッターなので、順番は動かせない。
私にしては早朝の7時に起きて備える。9時頃から簡単なリハーサルをしたが、声はまずまず出た。
予定ぴったりにイベントは始まったが、代表者の挨拶がまずあって、歌が始まったのは10時8分あたりから。聴き手はおよそ30名。予め提出してあったプログラムに従い、42分で以下の12曲を歌った。
「ろくでなし(シャンソン)」「サンタルチア(カンツォーネ)」「風来坊(フォーク)」「秋の童謡メドレー」「星影のワルツ(昭和歌謡)」「Let it be(ビートルズ、オリジナル訳詞)」「空港(昭和歌謡)」「抱きしめて(オリジナル)」「ラ・ノビア(ラテン)」「かなりや(日本唱歌)」「夢一夜(フォーク)」「また逢う日まで(昭和歌謡)」
担当のKさんからは「芸術の秋を多少意識した内容で」との注文があったので、普段この種の場では歌わない洋楽系の曲もかなり入れた。リスト提出時にはカッコ書きで曲のジャンルも付記したが、そのままプログラムにも反映されていた。
喉の調子は決して悪くはなかったが、歌い進んでも前回に比べていまひとつ場の乗りが悪い印象がした。
理由として、やはりライブの間隔が短すぎたこと、さらにはイベントを実質的に指揮し、進行も一手に引き受けていた担当のKさんが、やむを得ない事情で突然の欠席。「周りから場を上手に乗せる」という点では、多少物足りなさがあったように思える。
さらには、昼食用の豚汁の準備等でライブ中にかなり人の出入りがあったこと。全体として落ち着かないざわついた気分はあった。洋楽系やフォーク系の曲が、特に年齢の高い層には馴染まない面もあったかもしれない。
歌自体は大きなミスなく進んだが、「Let it be」をワンフレーズ歌ったとき、カポが前曲の「星影のワルツ」のままであることに気づく。「Let it be」にカポは不要で、このままではサビの部分がギリギリである。声が出にくい午前中ライブというリスクもあり、途中で歌を中断して「キーを間違えました」と、率直に詫びて歌い直した。
以前に一度だけチカチカパフォーマンスで同じミスをやらかしたことがあるが、やはりどこかで集中力が欠落していたのだろう。
聴き手も実に正直で、この日のアンコールはなかった。最低限の義理は果たせたが、いろいろと難しい条件が重なっていて、反省点の多いライブであった。