2012年12月11日火曜日

パトス~懐かしのひと時

 隣区にある公的空間「ことにパトス」で催される地域中高年むけのイベントに参加した。札幌地下鉄東西線琴似駅地下にあり、今年10月上旬に参加した「パトスカフェコンサート」と同じ会場である。
 市民の芸術・文化活動を支援するために様々な活動が実施されているが、今回は運営するNPO法人に関わっているTさんのお誘いだった。

 Tさんとは知人の紹介で知り合ったが、チカチカパフォーマンスを始め、私のライブに何度も来ていただいている。Tさん自身も長年紙芝居のボランティア活動をやっていて、「私が主催するイベントにぜひに」とのことで快諾した。


 開始は14時からで、全部で3組が出演。各自30分の持ち時間で、私の出番は最初のはずだったが、13時半過ぎに会場に着いてみると、セッティングの都合でトップは歌声サークルになったという。
 私は2番目に変わったが、さらに途中でTさんが「申し訳ないが、最後に歌って欲しい」とのこと。どこで歌ってもパフォーマンスに大きな違いはなく、すぐに了解した。
 14時ちょうどに開始。恵庭市の歌声サークル「ケンケンパー」による叙情歌が始まる。歌集を会場に配り、親しみのある唱歌系の曲を全員で歌いながら進行するという、歌声喫茶ふうの趣向だった。
 ステージには上らず、全員が会場と同じフロアーで演じていたが、客席との距離感を小さくする意図があるように感じた。伴奏はシンプルにガットギター1本で、ボーカルの邪魔にならず、いい感じに収まっている。


 予定より少し遅れて14時33分に終了。間髪をいれず、拍子木を叩いてTさんが舞台に登場。壇上にセッティングは済ませてあったので、引継ぎ時間ゼロである。

 Tさんの演目は紙芝居の常識を打ち破り、菊池寛の「恩讐の彼方に」。驚くべきことに、まるで講談のような長いセリフを台本も見ず、ノーマイクで堂々と演じていた。
 30分を超える熱演に、40名近く入った会場は水を打ったように静まり返る。関係者ではあったが、思わず見入ってしまった。
 ここで少しまた時間が伸び、私がスタンバイしたのが15時6分。転換の素早さから私も聴き手と同じフロアー上で歌うことを選択。備え付けのボーカルマイクを使い、ギターはシールドケーブルでPAにつないだ。
 そのバランス調整に少し時間がかかり、歌い始めたのが15時8分。終了時間は守りたかったので予定を変え、22分で以下の7曲を歌った。

「高校三年生」「夜霧よ今夜も有難う」「ブルーライトヨコハマ」「瀬戸の花嫁」「月がとっても青いから」「ここに幸あり」「また逢う日まで」


 この日の構成は事前の調整で「昭和歌謡」に特化したが、1曲目に予定していた「東京ドドンパ娘」は咄嗟の判断でカット。うまく説明できないが、場の空気でそう決めた。
 直前まで悩んだが、歌う場所が前回と異なるホール内となる可能性があったので、ギターはつぶしの利く新しいヤマハのエレアコを持参した。結果として生歌に近い環境だったので、これは正解だった。
 モニタが全くない難しい条件だったが、聴き手の反応はよかった。「叙情歌」→「講談的紙芝居」→「昭和歌謡」という流れはメリハリがあって、これまた結果的に正解。

「夜霧よ今夜も有難う」では間奏で拍手をいただき、「また逢う日まで」では自然発生的に手拍子が出る。終了後に複数の方から「もっと聴きたかった」、さらには「裕次郎がよかった」「『ここに幸あり』で思わず泣いてしまった」など、身に余る声をかけていただく。
「いいひと時だった」と、企画全体に対する声も多く、主催のTさんも満足気。


 Tさんの推挙で歌わせていただいたので失敗は許されず、そこが自己完結型のストリートライブとは異なるところ。冒険を避け、実績ある曲を並べた所以だが、Tさんの顔はつぶさずに済んだことをまずは喜びたい。