2012年5月22日火曜日

魂の歌

 映画「サウンド・オブ・ミュージック」のモデル一家であるトラップファミリーの2女マリアさんのドキュメント再放送をNHK-BSで観た。アメリカに亡命後、世界中を演奏旅行した家族の唯一の生き証人で、6年前にはアナログ放送で観たが、今回はデジタルハイビジョンの鮮明な画像である。
 ただ、画像以外に前回とは違う印象を持った。ラストで92歳のマリアさんが歌に関する重要なメッセージを発信していたが、なぜかその部分の記憶が残っていない。その要旨は以下の通り。

「歌は単なる娯楽ではなく、聴き手の魂に響くもの。人々の心に美しいものを伝えるもの」


 記憶が欠落している所以は、6年前には弾き語り活動を本格再開したばかりで、まだこのメッセージの意味が分かってなかったからだろう。だが、時を経たいまはその言わんとすることが痛いほど分かる。

「魂」という言葉は以前から好きで、たとえば20数年前に地域の子供たちにサッカーを教えていた際もしばしば指導で用いた。「シュートは魂をこめて打て」といった具合に。
「コーチの言ったあの言葉、いまでもよく覚えている」と、大きくなった教え子から言われたこともあり、確かに伝わるものはあったのだな…、とうれしく思った。
 時と場、対象は変わったとしても、人間をとりまく世界がそう大きく変わるわけではない。何事にも魂は必要で、歌も文章も人間もしかり。それが欠けたものは外観がいくら立派に見えたとしても、私にすればただのヌケガラ。追いかけようとは思わない。