2011年6月6日月曜日

人生のお手本

 15年近く使い続けた電気炊飯器がとうとう壊れた。蓋を止める部品が割れ、接着剤で補修してしばらく使ったが、再び割れた。蓋をガムテープで止めると一時的には使えるが、もはや限界。
 もともとが首都圏で一時浪人生活を送っていた息子からの貰い物で、5.5合炊きと大きく、夫婦二人の質素な食生活になってからは使いにくくなっていた。

 そんな折、妻がスーパーの安売りチラシで5,800円の格安電気炊飯器を見つけた。象印の3合炊きだが、ネット通販のどこよりも安い。炊飯方式がこれまでのIH式ではなく、普通のマイコン式だったが、調べてみると旧式だが電気代が安いという利点がある。
 迷ったが、夫婦ともご飯の味にはそううるさくないので、電気代が半分ほどで済むこの品を買った。


 さっそく2合を炊いて食べてみると、なぜかこれまでのIH式よりもはるか美味しい。おそらく5.5合炊き釜で2合炊くより、3合炊き釜で2合炊くほうが熱の回りがよいからではないか。

 新しい電気炊飯器で驚いたのは、釜の側についている電気プラグ。普通の差し込み式ではなく、なんと磁石でくっつく仕掛けになっている。
「炊飯後は外してください」と取説にあり、おそらく待機電力節約のためと思われるが、その着脱がエラく簡単なのだ。もしかすると、地震のときには簡単に外れ、トラッキング火災も起きにくいかもしれない。時代の先を読んだ仕掛けである。
 先月実施したソロコンサートには、昨秋の小学校同窓会で50年ぶりに再会した担任のO先生もお招きした。お宅が偶然我が家の近くで、車なら15分ほど。田舎の学校から右も左も分からぬ大都会札幌に転校直後から、先生にはあれこれと気遣っていただいた。
 目立たない生徒だったが、歌は得意だったので、クラスの代表に選抜され、発表会で歌ったりもした。その際に推薦してくれたのもI先生である。
「菊地クンは中学校ではきっと伸びるよ」と、励ましてもくれた。先生のその予言はほぼ的中し、成績に限れば中学校時代が最も伸びた。

 ご主人とお二人で早々に来ていただき、開演前にあれこれお話したが、私の名前は覚えているが、歌のことは記憶にないという。定年までの間に1000人近い生徒を担任しただろうから、無理もない。しかし、コンサートは大変喜んでいただいた。
 そのO先生から手紙が届き、コンサートや差し上げた著書のお礼と共に、北海道では代表的な美術展への招待券が同封されていた。中旬から札幌市内のギャラリーで開催されるもので、ご夫婦で出展されるという。定年後にご夫婦で始めた趣味だとか。ネットで調べてみたら、確かにお二人ともメンバーとして名を連ねている。
 つい最近まで町内の高齢者ボランティア事業の世話役をやっていたと、昨年の同窓会でもうかがった。芸術に対する深い思いといい、どこか共通するものを感じる。

 お二人とも70代後半だが、日々仲睦まじく暮らしておられるご様子。常に前向きな生き方と共に、人生の先輩として、よきお手本である。展覧会にも妻を伴ってぜひ伺いたいと思う。