2011年6月11日土曜日

場の持つ空気感

 6月に予定されている怒濤の4連続ライブの第1弾として、近隣の障がい者支援施設での夏祭りイベントに参加した。知人の紹介だったが、似た施設でのライブは今年1月に経験しているので、ほぼ同じ構成で準備した。

 知っている地域だったが、施設の場所は奥まっていて分かりづらい。地図はあったが、結局迷ってしまった。すぐに携帯で電話。説明を聞いてようやく到着できた。
 施設は旧小学校を改築したものだが、きれいに手入れされていて、古い校舎の暖かみがうまく活かされている。
 到着は開演15分前で音響テストは結局できなかったが、マイクとアンプは準備されていて、持参のPAは必要ないことが分かった。

 カギつきの楽屋を用意していただき、施設側からおでんや焼きそばなどの差し入れがあった。ところが私の不注意でおでんの汁が容器から溢れ、シャツやジーパン、靴の一部を汚してしまった。
 洗面所での汚れ落とし作業に追われ、1組目の「たぬきばやし踊り」を観られなかった。とんだ失態である。


 2組目の大正琴が始まった時点で、譜面台とシールド、ギターを持ってステージ横で早めにスタンバイした。単に演奏を聞きたいこともあったが、この判断が結果的に正解だった。

 12時45分から30分間続くはずの大正琴の演奏が、なぜか1時でぷっつりと終わってしまう。司会者(プロの方)もあわてていたが、メンバーは素早く撤収してしまった。
 いったい何があったのか分からないが、担当のTさんがすっ飛んできて、「菊地さん、予定より5分早く1時10分からやってください」と言う。終了は同じで、要するに35分間歌って欲しいという要望だった。
 普段は短めに終わっている曲をフルコーラス歌えば時間は延ばせるので、すぐにOKした。
 大正琴で使ったテーブルや椅子を撤収するのを手伝い、直ちにマイク類をセット。ボーカルマイクは問題なかったが、ギターを専用アンプにつないでみると、音がいまいち固い。
 しかもその音を別マイクでとり、中庭に設置のスピーカーでも音を出したいとのこと。テストなしの不安が募ったが、ともかくもやってみることになった。


 1時5分に準備は終わったが、その間、突然の合間をアドリブの漫談でつないでいた司会者が、すぐにでも歌を始めて欲しいとのサイン。再びの時間変更で、スタートをさらに5分早め、合計40分歌うことがその場で決まった。
 ライブでは何があるか分からないので、曲は5曲ほど余分に準備していた。いいですよと、快諾。楽譜ナシで歌える曲を混ぜれば、1時間までなら対応可能な体勢だった。

 1曲目の「カントリーロード」を歌い始めたが、不安が的中し、ギターの音が大きすぎてボーカルがよく聞こえない。フルコーラスを歌うはずが、結局一部を飛ばして短めに終えるはめに。
 PA担当の方が急きょ調整し、どうにかバランスがよくなった。結果としてエレアコではなく、モーリスを持参してマイク録りでやれば簡単だった。事前の打合せが甘かったことを悔やむ。
 聴き手はざっと200名余。20代から80代までと年齢層が広く、つかみの難しい場だった。3曲目の「ピクニック」で「飛び道具」のフットタンバリンを使い、動物の声の部分で会場を誘って、ようやくペースをつかむ。
 この種の「会場巻き込み型ソング」で使えるものは数少ないが、こうした難しい場では必ず準備しておくべきだろう。

 会場には座卓があって飲み物や食べ物も自由。大人の祭りなので、屋台ではアルコールも売られている。聴き手にとってステージは決して主目的ではなく、会話や飲食に忙しい姿も多かったが、そんな場でも熱心に聴いてくれる人はちゃんといた。
 ストローク系のにぎやかな曲を中心に準備したが、予定よりも10分伸びたので急きょ歌った「涙そうそう」が、なぜか最も受けた。自分としてはそう好きではないが、聴き手の受けはよいという、不思議な曲である。
「場所を選ばない」という意味では、「上を向いて歩こう」に似た貴重な曲だと悟った。

 古い木造体育館なのでむき出しの高い傾斜天井があり、札幌時計台ホールによく似た空間だった。ナチュラルリバーブが程よくかかり、歌っていて非常に心地よい。場の醸し出す独特の空気感がある。場で歌は間違いなく変わると思う。
 合計11曲を歌ってぴったり1時45分に終了。難しい条件下でのライブをうまくさばき、担当のTさんや所長さんにも大変喜ばれた。また少し自分の幅が広がった感。