春の彼岸には一昨年、九州に転勤となる長男の願いで、一度お参りに行ったことがある。しかし、山間部にある墓は予想を越える雪。持参したスコップで掘り起こすのに手間どり、墓の数カ所を傷つけて修復にかなりの費用がかかった苦い経験がある。
東日本大震災でも避難後に位牌を取りに戻ったり、仏壇があるからと避難をこばみ、命を落とした方々が多数いるようだ。しかし、生者あってこその死者ではないか。「生者のあらん限り、死者は生きん」である。まずは生き残ることだ。
引き続き防災用品のメンテナンスに励む。今日は携帯型の灯油ストーブを点検した。こちらも先日ふれたハリケーンランプと同様、20歳のときに敢行した自転車日本一周の折に「秀岳荘」という登山用品店で買ったもの。
「スベア121L」というスウェーデン製の品で、42年前で確か6,000円くらいした。軍用の携行型ストーブを作っていた会社だったので、堅牢さは抜群。20年程前に灯油注入口がエア漏れして修理したが、いまでも現役で使っている。
学生時代に豪雪で電柱がバタバタ倒れ、数日間停電したことがある。大学は休講、学寮の食事もパンとオニギリだけになり、街の店からは保存食が消えた。いまの被災地の状況と似ているが、私はこのストーブで買い置きしてあったラーメン等を作って自炊し、あまり不便は感じなかった。
(水道は山の湧き水を水源にしていて、普通に使えた)
同じ部屋やサークルの友人の分まで作ってやり、非常に喜ばれた記憶がある。
灯油は400ml入り、連続でおよそ2.5時間運転可能。火力は非常に強く、煮炊きはもちろん、暖房にも使える。
燃料が灯油なので受け皿の部分にアルコールを入れ、数分間の予熱をしてやる必要がある。(私は引火の心配がない固形アルコールを使っている)そこがやや面倒だが、ホワイトガソリンを燃料としているタイプより引火しにくく、はるかに安全であるし、燃料の入手も簡単。
自転車日本一周の際には照明ランプとストーブの選択にかなり頭を悩ませたが、「同じ燃料を使える」「燃料が入手しやすい」「燃料保管時の引火危険性が少ない」という3つの理由から、灯油を燃料とするもので統一した。
調べてみたら、このストーブはすでに生産中止で入手不可能だが、「マナスル」という日本メーカーが同じタイプの灯油ストーブをまだ生産している。
価格は1万円強。災害時には相当役立つと確信するが、乾電池や懐中電灯と同様、いまは品切れで入手困難のようである。興味のある方は、ほとぼりが冷めた時期に調査されたし。
このストーブの存在は当時同室だった登山部の先輩に教えてもらった。山登りをする人は、サバイバル生活に関するノウハウをたくさん持っている。
「どんな状況で火を使う事態になるか分からないから、暗闇でもストーブを組立てて点火できる訓練をしておけ」と言われ、自転車旅行前に何度も練習した。
今日やってみたら、手探りでもちゃんと組立てることができた。「雀百まで踊り忘れず」である。