幸いに妻は仕事が休みだったが、私は15時半に歯科の予約がある。しかし、待てど暮らせど「陸の孤島」「野中の一軒家」と自ら揶揄する我が家に、除雪車のくる気配はない。
窓から外の様子をうかがうと、道路は腰の高さほどの雪で埋まっていて、車はおろか、歩くのもおぼつかない状態だ。やむなく、病院に電話して予約を1週間遅らせてもらった。雪で歯科をキャンセルなど、過去に例のないこと。
妻に確かめると買物の必要はなく、取り立てて外出の予定はなくなったが、「陸の孤島」のままではさすがにまずいので、玄関前だけでも除雪しようかと思った。
服を着替えて除雪機の準備をしていたら、部屋がなんだか寒い。この日は昼間も暖房を切らず、微弱で点けていたはずが、ボイラを点検すると、「E」の赤いマークが点灯していて、スイッチが切れている。
カタログを引っ張りだして確認してみたら、異常燃焼による自動リセットらしい。以前にも確か同じことがあって、やはり猛烈な吹雪の日だった。窓を開けて確かめると、給排気筒が氷雪で完全にふさがっている。これでは消えてしまうはずだ。
除雪前にまず暖房ボイラを回復すべく、雪をこいで北側にある給排気筒まで到達。窓を外から叩いて妻に合図し、ヤカンに湧かした熱湯をもらって凍結部分にかける。家に戻ってリセットスイッチを押し、再スタートさせると問題なく運転できた。
素人ではちょっと分かりにくいトラブルだが、前回もこうやって自分で修復した。プロに頼むとそれなりのお金がかかり、回復までに時間もかかる。理科系、技術系の夫を持つと、家計が何かと助かる好例である。
暖房がひとまず戻ったので、遅めの昼食をとってようやく本格除雪を始めた。場所によっては1メートルを超す吹きだまりで、かなり手こずったが、およそ45分で玄関前はどうにか格好がついた。
いったん家に戻り、身体を暖めつつ、3時のお茶を妻といただく。その後、再び外に出て除雪を続けたが、広い通りにつながる右側の道は雪が深く、小型の電動除雪機では手に負えそうもない。
左側は比較的雪が浅いので、右側はあきらめて左を重点的に除雪していたら、ちょうど夕刊配達の女性と出逢い、その場の手渡しで夕刊を受け取った。
この日は郵便配達の姿も見かけなかった。おそらく速達以外は明日以降になるのだろう。夕方までに最低限、人が通れる道だけは確保した。万が一の救急車、消防車でも何とか到達できるはず。
そんな非常事態はあまり想像したくないが、何が起きるか分からないのがいまの世の中。「札幌の僻地」で生き抜くための、最低限の生命線は確保せねば。