2016年11月30日水曜日

施設を移るストレス

 老健施設への転居のため、朝早く起きて母の暮らす施設へと向かう。長姉の都合が悪くて立ち会えないというので、急きょ妻に代役を頼んだ。一夜にして10センチ近くの雪が降ったが、幸いに通行に支障はなく、9時ちょうどに到着。挨拶もそこそこに作業を始めた。
 まずは事務室で退居に伴う書類に記入なつ印する。家賃等の精算後、入居時に納めた敷金の一部が戻ってくるらしい。
(ちなみに、老健施設への敷金や入居費は不要だった)

 まずは母を探すが、いつもいる食堂に姿は見えない。事務室でダンボール箱と台車を借り、部屋に行ってみると、母はベットで寝ていた。
 退居手続き時に知らされたが、母は昨夜未明に部屋を抜け出して、別の部屋に入り込んだらしい。動機は不明だが、転居を職員から知らされたことによる動揺が、徘徊につながったのかもしれない。移るギリギリまで心配させるが、それももうすぐ軽減される。
「おはよう」と声をかけてすぐに荷物をまとめにかかったが、母は「今日は何するの?」とキョトンとしている。心配していた抵抗は全くなく、やや拍子抜け。
 10時には出発したかったので、あまり余裕はない。思っていたより荷物が多く、考えずにどんどん放り込んだら、段ボール箱5つにもなった。そのほかに大型のプラ引き出しもあり、大人3人と荷物全部を載せるには、非力な軽自動車ではとても無理だった。
 事情を話し、急を要しない荷物はあとから取りに来ることにする。

 ともかくも荷物を詰め込んで借りていた車椅子も返し、10時には出発した。車に乗って3人になった途端、母は急に普通の様子に戻って、「車がいっぱいで、にぎやかだねぇ」とか、「○○子さん(妻の名)は元気?」などと聞いたりする。
「後ろに乗ってるよ」と応ずると、「あら、そうだったっけ」ときた。作業時に顔を見て妻を思い出し、ついでに名前まで思い出したようだ。妻はしばらくぶりの顔見せなのだが…。


 約束の10時半少し前に新しい施設に到着。ここでは荷物をすべて台車で職員(ボランティア?)の方が居室まで運んでくれた。その扱いの違いに驚かされる。
 居室は2階の陽当たりのいい南部屋。トイレが目の前で、厨房にも近い。母の様子を事前に充分調べ、場所も配慮してくれたらしい。

 その後1時間ほど、ケアマネジャーや看護師、栄養士、リハビリ担当の方が入れ替り現れ、挨拶やら細かい打合せをする。その間妻は荷物の整理に励んでいたが、収納スペースがやや少なく、衣類が全く整理されていなかったので、煩雑さに悲鳴をあげていた。
 母もいろいろな人と初対面の挨拶を交わし、昨夜からの緊張もあったのか、途中で疲れた表情を見せ始めたので、カーテンを閉めて昼食までベットで横になってもらった。
 面会時の手順の説明を受け、(手の消毒のほか、体温を測って書類記入。さらにはマスクを常時つけることが義務)いったん自宅に戻って昼食をとった。
 居間のベンチでちょっと横になったが、前施設に荷物を残してきたことが気になり、仮眠できない。結局午後から取りに行くことになった。

 傷んでいた衣類をまとめて途中でリサイクルショップに置き、前施設に残っていた3つのダンボール箱を積み込む。月末なので帰路にあるトライアルで定番食材をついでに買い込む。不足していた母の衛生備品も100均で買った。
 ようやく終わって家に戻ったら、あたりはすでに薄暗い。再度届ける備品は急を要しないので明日以降と決め、その後も黙々と荷物の整理を続けた。

 移動距離も比較的短く、作業の手が2つあったにも関わらず、思っていたよりも時間がかかってしまい、さすがに疲れた。腰痛が回復傾向で、痛みが出なかったことが幸い。
 病院を除き、この7年間で母にはこれが3つ目の施設となるが、居場所が変わるというのは、本人にとっても家族にとっても相当なストレスになるものと悟った。