2016年11月3日木曜日

記憶の蒸し赤飯

 昨日の祝い鯛に引き続き、孫娘のお食い初め儀式に必須の食材である赤飯を作る。どちらも仕切り役は妻だが、ネットで情報を集めてプリントしたり、各工程の時間を正確に測ったりするのは私の役目。

 これまで妻が作る赤飯は炊飯器を使う簡易な手法だったが、過去に妻の母や私の母が作ってくれたものは、蒸し器を使った本格的なもの。伝統的な調理法で、炊いたものより格段に美味しいが、すでに妻の母は亡く、私の母は施設暮らしの身。
 妻は蒸し赤飯を作ったことがなく、今回もてっきり炊き赤飯でやるものと思っていたら、なぜか蒸し赤飯に挑戦したいという。期せずして祖母の立場となり、次の世代へとバトンを渡す何かしらの覚悟のようなものが芽生えたのだろうか。
 蒸し赤飯をやるうえでの最大の問題は蒸し器だった。本格的なセイロや蒸し器が我が家にはなく、これまで使っていたのは、数百円で買った折り畳み式の簡易蒸し器。
 アンマン程度ならこれで充分だが、果たして赤飯をこれでやれるのか。新たな投資をせず、なんとか手持ちの調理器具でやれないか画策した。


 簡易蒸し器を赤飯で使うには、脚が短すぎると妻が主張する。底に溜めておける水の絶対量が少ないというのだ。
 何かをかまして高くしてやればいいと考え、材料を探す。丸一日考えて、金属製の洗濯バサミを思いついた。20歳の時に自転車旅行で使った物だが、はさんでみるとピッタリはまる。これにより、25ミリだった脚が倍の50ミリになり、充分な高さになった。

 鍋は手持ちで最大の物を使うことにする。直径260×深さ115で、簡易蒸し器を最大に広げた状態ですっぽり収まった。


 以降はネットに載っていたレシピに従って調理。鍋にセットした簡易蒸し器の上に蒸し布を広げ、前夜から準備してあった餅米と小豆を混ぜて載せる。
 まず強火で15分蒸し、いったんボウルにあけて固まりをほぐしながら、豆のゆで汁(しと)をかけて混ぜる。


 再度鍋に蒸し布をセットし、強火で20分蒸して米の硬さを確認。少し固かったので、その後10分、5分と様子を見ながら蒸し時間を追加した。(計35分)
 ほどよい硬さになったので、ボウルにあけて蒸気を飛ばし、完成。記憶の中にある母が作った伝統的な蒸し赤飯と同じ味で、ありあわせの調理器具での初挑戦にしては、上々の出来である。

「今後やれる自信がついた」と妻も満足気な表情。漆器に移して庭の葉をあしらい、昨日作った祝い鯛と共に、長男夫婦の待つハレの舞台へと移動した。