地上と地下の会場は前回と同じで、時間帯も同じのアカプラパフォーマンスとチカチカパフォーマンスである。違っているのは天候で、前回よりもかなり肌寒い。いまにも雨が降り出しそうな曇天で陽射しは全くなく、風がほとんどないのが唯一の救いだった。
まずは地上会場となるアカプラに着く。前回と同じ東端のベンチが植栽の保守点検で作業中。トラックや機材で埋まっていて、全く使えない。やむなく中央やや東寄りのベンチに陣取る。
前回の失敗をふまえ、リクエストスタンドは風に弱い組立て椅子の転用をやめて、事務局貸与の看板のうち、アカプラでは使わない方を利用して、ヒモでしばりつける方式に変えた。
看板自体が倒れる可能性もあるので、2つの看板を持参のゴムベルトで一体にして止めた。
準備中に中年女性からいきなり声がかかる。
「お兄さん、これから歌うの?何時から?」
歌う前からお客さんとはありがたい。いますぐ始めますと、写真を撮って直ちにスタンバイする。
「私、島倉千代子が大好きなの。何か歌える?」
「人生いろいろ」「襟裳岬」「愛のさざなみ」…など、思いつくままにレパートリーを挙げると、「襟裳岬」をお願い!あの曲が一番好きよ、と女性。
最初はフォーク系を歌うつもりでいたが、急きょリクエストにお応えすることに。
12時10分から歌い始め、フォークや昭和歌謡を中心に45分間で13曲を一気に歌った。
「襟裳岬(島倉千代子)」「大空と大地の中で」「青葉城恋唄」「わかって下さい(初披露)」「雨が空から降れば」「ワインレッドの心」「少年時代」「アビーロードの街」「北の旅人(南こうせつ)」「恋の季節」「アカシアの雨がやむとき」「恋のバカンス」「どうにもとまらない」
突発リクエストの1曲目は別にして、構成としては「北の旅人」までがフォーク系、「恋の季節」以降が昭和歌謡系である。
スタートから幸先のよいステージを予感させたが、2曲目以降になると周囲の反応は激変し、関心を示す人は皆無に近かった。最高気温が17.9度という寒さのせいか、通行人がめっきり少なく、ベンチに座る人もまばら。
それでも通りの風になって淡々と歌い続けたが、遠くから視線を送ったり、通りすがりに歩調を緩めて関心を示す人はいても、立ち止まったり、リクエストをくれるまでには至らない。
まるでガマン比べのような寒い時間が通りすぎてゆく。唯一拍手が起こったのが、「アビーロードの街」。過去に数回しか歌ってないが、曲調が路上ライブ向きかもしれない。
ともかくもノルマだけは果たして、次なる会場である地下広場に向かうべく、機材を畳んだ。前回から修正した風対策面は問題なく機能したのが、数少ない収穫だったかもしれない。(後半に続く)