2015年6月29日月曜日

チカチカ百花繚乱

(前回からの続き)
 旧道庁前赤レンガ広場でのアカプラパフォーマンスを終え、まずは腹ごしらえをする。前回は地下広場へただちに移動したが、今回は立派なベンチのある赤レンガ広場に残って食べた。
 食後に北4条広場へと移動してみると、地上に比べて明らかに人通りが多い。雨や雪のほかに、風や気温も「地上か地下か?」の重要な選択肢になっているようだ。


 この日は3組の共演だったが、開始時間が迫っても他パフォーマーの姿が見えないので、前回同様にトップで歌うことにする。
 14時から歌い始め、結果として40分で11曲を歌った。(※はリクエスト)

「ラブユー東京」「港町ブルース(初披露)」「愛人」「夜霧よ今夜も有難う」「男と女のお話」「青葉城恋唄」「恋の町札幌」「アカシアの雨がやむとき」「池上線※」「抱きしめて(オリジナル)」「熱き心に」

 地上とは打って変わって、1曲目から熱い反応。一人また一人と立ち止まる人が増え続ける好循環で、最後まで聴き手が途切れることはなかった。
 ピークは「アカシアの雨がやむとき」あたり。最近は集客的に苦戦する状態が続いていたが、感触としては20人を超え、今年の最高集客数を記録したかもしれない。
 歌の途中から(もしや…)と気になっていたが、終了後に笑顔で近づいてきた女性が、過去に4度も聴いてくれているSさんだった。偶然通りかかったそうで、この日が実に5度目の遭遇。よくよく縁のある方だ。
 Sさんには個人的に企画してくださった2つのライブにも招かれていて、チカチカパフォーマンスから生まれた音楽の絆である。この日はこれまで聴いたことのない曲もあったそうで、大変喜んでくださった。

 さらに驚いたのは、若い女性(20代前半?)がついと近寄ってきて、「先日の北海道神宮例祭のステージを観ました。《傘がない》が強く印象に残って、MCでチカホで歌っていることを知り、来てみました」という。
 ネット検索で知ったのですね、と確かめると、いいえ、今日が休みなので、たまたま広場に来てみただけです、とのこと。これまた単なる偶然のなせる業。それにしても、ステージでの歌唱が印象に残って、別のステージも聴きたくなったとは、歌い手にとっての殺し文句ではないか。
 相手が孫のような世代となると、なおさらだ。正直うれしい。


 14時半ころに同時にやってきたパフォーマー2組に場を引き継ぐ。1時間20分休憩し、16時から第2ステージ開始。
 他のパフォーマーが1ステージのみで帰るというので、会場は独り占め状態。フォーク系を中心に、延々17時近くまで歌い続ける。(※はリクエスト)

「季節の中で」「時代」「ワインレッドの心」「やさしさとして思い出として」「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」「アビーロードの街」「万里の河※」「落陽※」「巡恋歌(初披露)」「君恋し※」「桃色吐息」

 16時を過ぎると集客は激減するのが常なので、あまり期待せずに、流れ次第では5曲くらいで打ち切るつもりでいた。ところが予想外に人が集まってくる。やめるきっかけをなくしつつ、目についた曲を歌い続けることに。
「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」を熱心に聴いていた中年男性、終わると近づいてきて、原曲と違ってる箇所があるという。一瞬歌詞かメロディでも間違ったのか…?と思ったが、指摘されたのはサビの部分のギター奏法だった。
 単純にストロークで弾いているが、そこは三連符で弾くべき、とのこと。原曲はあまり聴いてなく、ずっとこれまで自己流でしたが、未熟な部分はどうぞご容赦を、と陳謝。実はアルペジオ奏法だと指摘通りに演れるが、その言い訳はしなかった。
 通りすがりとはいえ、わざわざ指摘してくれるのはありがたいこと。謙虚に受け止めて、次回に活かしたい。

 後半になると立ち止まった方からリクエストが次々と飛び出す。結果として、第1ステージと同じ11曲を歌うことに。
「万里の河」「落陽」は初めてリクエストを貰ったが、この2曲で驚くほどの人が集まってきた。「落陽」は過去にもほとんど歌ってなく、チカホでは初披露。自分には向いてないと決め込んでいたが、これほど強いのなら、今後は考えなおすべきか。

「君恋し」は第1ステージで声をかけてくれた若い女性からのリクエスト。16時くらいからまた歌うかも?と言っておいたので、念のため来てみたという。またまたうれしい言葉。
 それにしても、その若さで90年前の懐メロをなにゆえ知っているのか、時間がなくて聞き漏らした。
 歌っても歌っても人は途切れない状態が延々続いたが、会場の終了時刻が迫ってきたこともあり、「桃色吐息」で打ち切りとさせてもらう。
 やれやれと機材を片づけていたら、通りから手を振る3人の若い女性の姿が。何と札幌駅近くに勤務する長男のお嫁さんと、その知人である。
 詳しい経緯は省くが、知人は九州から旅行に来ているお嫁さんの親戚とその友人。この日路上で歌うことは特に告げてなく、遭遇したのは全くの偶然である。何とも偶然の重なる日だ。

 はるか南からの旅人なので、歌でも披露すべきかと時計をみると、まだ15分の余裕がある。幸いにマイクスタンドは組んだままの状態。急ぎPAにケーブルをつなぎ直し、北への歓迎の意味もこめて、北海道にちなんだ名曲「大空と大地の中で」「北の旅人(南こうせつ)」を続けて歌う。
 すると、それを聴きつけて通りすがりの人がまた5〜6人集まってきた。単なる身内のお接待のつもりでいたが、事情を説明して、一緒に聴いていただくことに。
 この日は喉が絶好調で、合計で37曲を歌ったが、まだまだ余力があった。もしかして、喉の調子が集客に好影響を与えていたかもしれない。だとすると、通りすがりの聴き手とは、実に敏感で正直な存在ではないか。

 終わると、南からの旅人2人が涙を流している。「すごくよかったです。泣けました」と、これ以上ない感謝感激の言葉。
 実はこの日は早朝7時に、以前にチカホでCDを買ってくれた若い男性から突然の電話もあった。まるで狙いすましたように、次々と偶然が重なる日。長い人生、こんな日も確かにあるのだ。