2015年6月10日水曜日

久々のパトス

 札幌市営地下鉄東西線、琴似駅地下にある公的空間「ことにパトス」で、1年半ぶりに歌った。
 2012年10月のカフェコンサート以降、計7度もいろいろなイベントに出演していたが、ガンを患って以来、活動をセーブせざるを得なくなり、すっかり足が遠のいた。

 今回、久しぶりに声がかかったのは、市内にある重症心身障がい者施設の音楽バンドが主催するイベント。平日の昼間に実施ということで、出演できるパフォーマーが限られている。しかも、かってパトスで演奏したことがある者という条件もあった。
 障がい者支援系イベントには、他にもいくつか関わっていて、経験値として大きな問題はない。明るいうちに終わるイベントは負担が少ないので、むしろ歓迎である。他の出演予定者も既知の方ばかりだったので、ありがたくお受けすることにした。


 開始は正午からで、まずオープニング担当としてパトス系の3人のパフォーマーが演じ、30分の休憩をおいて音楽バンドが演奏する、という手順だった。
 11時40分に会場到着。共演のカリットおじさんと、およそ2年ぶりに再会。互いの健康と無事を確かめ合った。
 12時ちょうどにイベント開始。会場使用時間の都合で、リハの類いは一切なしのぶっつけである。
 この日の主役はあくまでラストの音楽バンドで、そこはわきまえておく必要がある。ステージには普段はない車椅子用の傾斜アプローチ台も設置されていた。

 まずはカリットおじさんの紙芝居「黄金バット」があり、続いてまるりっちさんによるピアノ弾き語り「昭和歌謡&アニソンメドレー」やオリジナル曲と続く。みなさん経験豊富で、場のさばきも実に巧みである。
 最初は20名ほどだった聴き手も、場が進むにつれてじわじわと増えてきた。


 1人の持ち時間は20分だったが、予定よりも少し早く進み、12時39分くらいから私の出番となる。久しぶりに歌うせいか、珍しく緊張している自分に気づく。しかし、いざステージに上ってライトを浴びると腹がすわり、落ち着いて歌えた。
 聴き手の年齢層がまるでつかめず、構成には悩んだが、幅広い客層を想定してチョイス。およそ17分で以下の5曲を歌った。

「大空と大地の中で(フォーク)」「ボラーレ(カンツォーネ)」「誰も知らない夜(オリジナル)」「時の流れに身をまかせ(昭和歌謡)」「オー・シャンゼリゼ(シャンソン)」
 客席を見回すと、予想通り下は20代から上は80代あたりまで、非常に幅が広い。多ジャンルのバラエティに富んだ選曲は正解だった。

 無難にまとめて、休憩となる。事前に了解を得てオリジナルCDの告知をしたが、終了後に買ってくれた若い女性がいて嬉しかった。


 休憩を利用した長い設営時間を経て、ラストの音楽バンド「ドナルドたっく」のステージが始まる。聴き手はさらに増え、30名を超えた。ステージ上にはサポートも含めて20名ほどが陣取る。
 主旋律やリズムは3人のサポートメンバーが補佐していたが、ハンデにもめげずにひたむきに演奏しようという心意気に圧倒された。これぞ音楽が持つパワーであろう。

 長いブランクという事情もあって難しい場だったが、旧交を温めたり、新しい出会いもあったりして、結果として意義あるものとなった。