2012年9月28日金曜日

小樽十三夜

 宮崎から帰省旅行でやってきた長男夫婦を連れて、午前中から妻と4人で小樽観光。なんでも航空券の還元ポイントが溜まっているが、期限が9月末までなんだとか。飛行機など数年に一度しか乗らないので、そもそも航空券の還元ポイントなるものの仕組みがよく分かっていない。

 ともかくも、事前に名所をネットで充分に調べ、食事やお茶の場所もおおまかに決めて準備した。だいたい予定通りに運び、当初の予報では雨だった空模様も、不思議にまずまず晴れた。私と長男の二人の晴れ男の力、絶大である。


 まずは旧青山別邸という鰊御殿を見物。小樽駅から車で10分ほどで、築後100年近くの歴史がある豪邸。2年前に国の文化財にも指定された。
 20年ほど前に隣地に新館が増築された際、一部の設計に関わった。調査のため数回現地を訪れたので、場所はよく知っている。その時以来だったが、周辺の様子はあまり変わっていなかった。
 旧邸をまずゆっくり見物したあと、新館にあるレストランで食事。美味しい鰊蕎麦を食べた。


 その後、小樽運河近くに車を停め、運河から各種ガラス館、オルゴール館などを散策。歩きすぎて疲れ果て、途中のカフェでお茶を飲む。
 小樽運河を訪れるのも実に10数年ぶりだったが、以前ここを基点にギターインストの路上ライブをやっている青年をネットで知り、路上ライブの情報を多数得ていた。偶然だが出身大学が末の息子と同じで、親しみを持った。

(もしかして今日もいるかも…)と運河沿いの遊歩道を進むと、かなり奥で一人の青年がギターを爪弾いている。彼だ!と直感し、そばに寄ってじっと耳を傾ける。手持ちのコインを投げ銭箱に入れると、軽く会釈しつつ演奏を進めた。
 曲は「第三の男」。初めて聴いたが、卒業後安定した一般企業ではなく、厳しいプロの道を選んだだけあって、演奏は実に巧みである。
 終了後、言葉を交わす。以前からネットで知っていて、会いに来たことを告げると、とても喜んでくれた。チカチカパフォーマンスやヘブンアーティストの路上系パフォーマンスに関し、しばしの情報交換。
 向こうから名刺を差し出され、恐縮しつつ交換する。「今度ぜひご一緒しましょう」と言われ、ぜひとも、と応じた。何らかの形で実現すればうれしい。


 夕暮れが迫ってきたので、小樽駅近くの三角市場で土産物を買い、その後小樽商大の脇から山道に入り、旭展望台に行く。10年近く前、末の息子が大学卒業を控えていた際に、記念に妻と3人で登った道だ。
 偶然、空に浮かぶ月が満月間近の十三夜。月明かりが海と空を赤く照らし、山を黒く浮かび上がらせている。その直下には小樽の夜景が広がり、絵のような美しさである。昨年見た函館の夜景とはまた趣きが異なっていて、家族4人でしばし見とれた。
 その後、直前に電話で予約してあった祝津の寿司屋に行く。繁華街からは外れている小さな店で、客は誰もいなかった。50貫5,250円の寿司をまず頼み、他にイカと鳥のかき揚げも頼む。
 まな板の上に載った寿司が、頼んで数分で10貫ずつ順に運ばれてきた。信じられないほど早く、安く、そして美味い。ネット検索で知ったが、絶好の穴場を探し当てた。1時間ちょっとそこにいて、全員満足して帰路につく。強行スケジュールでちょっと疲れたが、家族で楽しい時間を共有できた。

 親の面倒を見るのと同時に、子供やら孫やらの面倒も見るのが我らが世代の宿命。(孫はまだいないが)さらには、自分や自分たち夫婦の在り方を模索したりもせねばならぬ。実に忙しい世代なのだが、元気でいるうちはせいぜいお接待に励むことにしよう。