2012年9月15日土曜日

酷暑の掛け持ちライブ

 31度に迫る酷暑のなか、日に2本という掛け持ちライブを久しぶりにこなした。弾き語り活動を本格再開した時期に1~2度やった記憶はあるが、心身に多大なストレスを伴うので、還暦を過ぎてからは意図的に避けている。
 しかし、今回は断れない条件がそろってしまった。まずは1年間続けた札幌駅地下歩行空間でのチカチカパフォーマンス・オーデションである。一度合格しても、必ず1年毎にライセンスを更新する必要があり、受けないと資格を失う。再開するには、半年後にゼロから受け直すことになる。
 チカホではこの1年で17回のパフォーマンスをこなし、延べ300曲以上は歌っている。多くの出会いがあり、新しい発見があり、自分の歌の幅も大きく広がった。
 集客面でも限界値と言われる60名に数回迫り、ある程度の達成感はある。このまま受けずに流してしまう考えもあったが、熟慮のすえ、もう一回だけ更新してみようかと思い直した。
 仮に半年後に受け直しても合格する保証はなく、やるなら実績が残っているいまのうちだ。


 日程はかなり前から決まっていたが、「敬老月間」である9月中旬と聞いて、(もしかして何かの訪問ライブと重なるのでは…)との不安があった。しかし、調整してうまく避けたつもりでいた。

 ところが数日前になって地元社福協の責任者から電話があり、依頼を忘れていたが、週末の敬老会のラストに出演していただけないか、という。聞けば、日程も時間も全く同じである。
 指定された懐メロ系の曲を歌いながらリードし、会場の方と一緒にシングアウトするという大事な役割で、過去2年続けて出演している。カラオケやピアノは使いにくく、ギターが手っ取り早い。すでにプログラムも印刷し終えており、代役はいないという。
 日頃お世話になっている方なので断りにくい。義理は大事である。チカチカの事務局に事情を話し、オーデションの順序を極力早い時間に調整してもらうことにした。


 オーデションの順序は11組中のトップで、13時10分開始である。この時間なら終了後に何とか地元に戻って、敬老会のラストに間に合う。
 当初は10分の持ち時間だったが、3回目となる今回は受験者が半減し、急きょ20分に増えた。直前の決定だったので、予定通り10分でもよいとのことだったが、目一杯を使うことにする。長く歌えば聴き手は徐々に増える傾向にあるので、パフォーマンスとしては正解だと判断した。
 とはいえ、20分間には転換時間も含むので、実質17分前後に収める必要がある。この1年の総集編のような位置づけで、ジャンルの異なる以下の5曲を歌った。

「サン・トワ・マミー」(シャンソン)「エーデルワイス」(唱歌)「季節の中で」(フォーク)「つぐない」(演歌)「聖母たちのララバイ」(昭和歌謡)

 ほぼ予定通りにライブは始まったが、冷房がないので地下も外と変わらぬ暑さ。歌い始めたとたん汗が吹き出した。写真の顔が妙に上気しているのは、上がっているのではなく、暑くて体温が上昇したせいである。
 トップなので、100席近くある会場はまばら。気楽といえば気楽だが、やはりたくさん集まってくれたほうが張り合いがあるというもの。
 いつものペースで無用なMCは省き、中華Padによる電子譜面で曲間の切換えも瞬時。サクサクと歌い続けるうち、じわじわと聴き手も増えてきた。ラスト2曲あたりでは、最前列に座る方もかなり出てきて、8分ほどの入り。
 パフォーマンスとして弾き語りの集客力はいまいちなのが日頃の活動から分かっているので、これだけ集めれば充分。オープニングアクトとしての役目は果たせたと思う。

 実績ある曲ばかりなので無難にこなしたが、モニターが足元にないので、ほとんど勘で歌わざるを得なかった。持参したPAを真横に置く普段のスタイルのほうがむしろ歌いやすい。
 ラストの曲の最後のストロークで、ハイコードAmの押さえがやや甘く、音がぶれた。暑さによる集中力の欠落だが、もったいないことをした。しかし、実質時間は練習通りに17分ぴたりで収めた。
(練習ではMCも擬似的に入れるので、ズレはまずない)

 会場で偶然、知人のSさんに出会う。ライブハウスで知り合った方だが、今回初めて受けるのだとか。妻が仕事でこれなかったので、写真はそのSさんにお願いした。
 終了後、ただちに地元の地区センターへと向かう。Sさんのステージは後半なので、見届けることはできない。駐車場へむかう途中、さすがに疲労感を感じたが、もうひとがんばりである。


 酷暑の掛け持ちライブの1本目を何とかこなし、オーデションの結果を確かめる暇もなく、すぐに機材をかついで駐車場へと戻る。普段と違ってPAとマイクスタンドがないその分、いくらかは楽だが、とにかく暑さのなかで歌うのは体力を消耗する。
 ひとまず車を出して木陰に停め、持参したバナナとクッキーを水で流し込む。こんな日に歌うには、マラソンでもやるような準備が必要だ。
 ひと息ついたのち、次のライブ会場である自宅近隣の地区センターへとむかう。ここで13時から地元社福協主催の敬老会が進行中である。自宅に戻る時間はなく、機材は出掛けに積み込んであったが、実はこの機材が曲者で、2つのライブで微妙に種類が違うのだ。
 チカチカパフォーマンスの機材は、常用するオベーションのエレアコに太めのシールド、そして電子譜面搭載の中華Padと譜面台である。ところが、地区センター敬老会ではエレアコが使えず、いつもはモーリスギターを持参してマイク録りをしていた。
 今回もそのつもりでいたが、最近になってモーリスギターの音ズレがひどく、カポを移動するごとにチューニングするような状態。ギターを2台持参する煩わしさもあり、今回は両方のライブを同じエレアコでやることにした。

 エレアコでのマイク録りもやれなくはないが、常用する乾電池式のPAを持参し、ギターの音だけをこれで出すことにした。予算の関係で敬老会には専任の音響スタッフが不在。やむを得ない選択である。


 15時過ぎには会場に着き、まずは責任者のMさんに到着の挨拶。急な依頼で気をもんでいたようで、しきりに恐縮された。
 私の出番は15時45分だったが、プログラムを見ると持ち時間が10分に減っていて、しかもラストで歌うはずだった「故郷」が、なぜか「青い山脈」に入れ替わっている。
 急きょMさんと打合せたが、Mさんの意向が印刷側に届いていなかったらしい。中華Padに全譜面が入っているのでどちらでも歌えたが、結局はプログラム掲載の「青い山脈」で行くことになる。持ち時間は多少伸びても、予定曲を全部歌って欲しい、とのことだった。

 中華Padをとりにいったん駐車場に戻り、「青い山脈」のコードを確認。他の3曲は印刷譜面でやるつもりでいたので、その場でプログラムの歌詞にコードを書き写す。時間ロスを最小限にするべく、控えのロビーでPA用の三脚や譜面台を組立て、シールドも移動が楽な細くて短いタイプをPAにつないで準備した。
 節電のため、地区センターにも冷房はない。出番がくるまでロビーの椅子に座っていたが、暑さと疲れでついウトウトしてしまう。
 少し遅れて、15時55分からライブ開始。ギターを肩から背負い、PA一式は両手で抱えて舞台袖の階段からステージに上る。譜面台とマイクスタンドだけは係員の方に運んでもらった。電子譜面を使わなかったのは、この舞台袖からの移動時に慣れない係員が中華Padを落下させてしまう恐れがあったから。
 素早くシールドをつないでPAのスイッチを入れてスタンバイ。この間、たぶん1分以内である。
 季節外れの暑さと3時間近いイベントのラストということで、150席ある会場は半分ほどの入り。聴き手の多くが扇子やウチワを使い、さすがに疲れが目立つ。こんな展開も予想していたので、選曲は元気がよくて短めの懐メロ系でまとめた。

「月がとっても青いから」「高校三年生」「青い山脈」「世界の国からこんにちは」

 どの曲も2分ほどで終る曲だが、場の反応によってはさらに切り詰めるつもりでいた。しかし、「月がとっても青いから」の反応が案外よいので、珍しく3番まで省略せずに歌った。
 遅れて着いたのでほとんど観ていないが、プログラムによるとギター弾き語りの出演者は私一人。ポップ系の懐メロも皆無だった。多数が出演するこの種のイベントは、「他があまりやりそうにない選曲」というのがポイントのように思われる。

 ラスト2曲は主催者指定のシングアウト用の曲で、まずは無難にこなした。真横に置いたPAから響くギターの音はよく聞こえたが、ボーカル用マイクの音は高い位置にあるスピーカーから出るので、ステージからはほとんど聞き取れず、勘で歌わざるを得ない。
「モニターなし」「リハなし」「時間や曲は直前でよく変わる」毎度のことだが、この種のステージでは、こうした悪条件がごく普通であり、それらをうまくさばく技量が求められる。過酷だが、自分のスキルは間違いなく向上する。