以前から穴は小さめだったが、思い切って5ミリのドリルにしてみたら、今度は少し大きすぎた。
太めのピンの予備はなく、タイトボンドで穴を狭くしようと一瞬思ったが、乾燥にまた時間がかかる。思いついて黒のビニルテープを半周だけピンに巻いてみたら、ぴったりおさまる。ひとまずこれで止めることにした。
実はこのほかにも問題があって、弦の響きを本体に伝える「サドル」と呼ばれる大事な部品が、新しいブリッジに合わない。幅はOKだが、厚みと高さが全く違うのだ。
交換したブリッジはマーチン型で、サドル幅は2.5ミリ。本体もかなり厚くて頑丈で、溝の深さも浅い。ところが既存のS.yairiのブリッジは、幅が3ミリで本体も薄く、サドル用の溝も深い。相対的にブリッジが脆弱になり、数年で割れてしまった理由は、そこにあった感じがする。
既存のサドルは幅も高さも相当削らないと新しいブリッジには合わないが、以前に交換したモーリスのサドルが保存してあったことを思い出し、合わせてみたら計ったようにピッタリ合う。
仮固定して本体からサドル先端までの高さを測ってみたら、従来とほぼ同じ。何でも捨てずにとっておくものだ。
全部張り終えてチューニングし、12フレットでの高さを測ってみると、1弦で約2.7ミリ、6弦で約3.7ミリといったところで、手持ちのオベーションとほぼ同じ数値。サドルを削ればもう少し下げられるかもしれないが、別の弊害が怖く、ひとまずこれでよしとした。
アンプにつないで10曲ほど弾き語ってみたが、現時点では問題なく弾ける。1年3ヶ月ぶりなので記憶は薄れていたが、音もほぼ同じ印象である。もう少し様子を見る必要はあるが、現時点では「修理成功」と位置づけてよいのではないか。
ただ、生音もアンプにつないだ音も、7万円のオベーションにはかなわないな、と正直思った。しかも、ストラップを使って1時間近く弾くと肩が疲れる。
不思議に思って手持ちの3本のギターの重さを量ってみたら、オベーションとモーリスがおよそ2,200gで、S.yairiだけが2,400gある。(いずれもストラップ込み)この200gの差、意外に大きいのかもしれない。
期せずしてオベーションギターの利点を再認識したが、S.yairiの良さは、カポをしてもほとんどチューニングが狂わないこと。今後実戦で使う機会があるかどうかは分からないが、非常時の予備としての役割は果たせる。
何よりも「最小限の費用で自力でブリッジを交換した」というチャレンジスピリッツにこそ、今回の作業の大きな意味があるのだ。