2010年11月13日土曜日

ココロザシ

 いきものがかりの「ありがとう」という歌を練習し始めた。NHK朝の連ドラ「ゲゲゲの女房」のテーマソングで、ひさびさのフォーク系の歌である。「Bm7-5」などという、トンデモなく難解なコードがあるが、どうにか押さえ方を会得。あとは歌い込むことだ。
 いきものがかりは以前から好きで、ほとんどのアルバムは持っている。ボーカルの吉岡聖恵のブレがなく、伸びやかでいて、わずかな揺らぎのある声が好きだ。

 音程が正確であることはボーカルの必須条件だが、ただ正確なだけなら、しょせんコンピュータの歌う初音ミクにかなわない。正確な音程ラインに沿いつつも、ごくわずかな揺らぎがあること、それこそが聴き手の心を揺さぶる重要なポイントであると私は思う。
 人間の存在そのものに不条理で曖昧な部分があるから、聴き手は声に潜む「揺らぎ」を本能的に求めるのではないか。
 修練を重ねてまずは正確な音程を会得し、次にいつどこでどのくらいこの「揺らぎ」を加味するか?すべては歌い手の裁量であり、しかもその模範解答はおそらくない。だから歌は面白い。


 数日前にNHKの「SONGS」でいきものがかりの特集をやっていたが、リーダーの水野良樹が「自分たちの歌が誰かの役に立っているのか、不安なまま活動を続けていた」と語っていた。
 その迷いや憂いを払拭してくれたのが「帰りたくなったよ」で、この曲を歌うと会場で涙を流す人が必ずいるのだそう。それを見て自分たちの今後の「使命」「歩みべき道」がはっきり見えたという。
 ただ目立つこと、成り上がること、金モウケに走ること、そんな潜在動機で歌う人々が多いなか、(私もそうかもしれないが)実績のあるプロ歌手でそんなことを考えている人がいたことを知って驚いた。
自分の歌で泣いてくれる人がいることを知り、自分の活動に自信を持つ」ことは、最近になって少しずつ私も感じ始めたことだが、私はそれなりに年輪を重ねて、すでに人生に先の見えた61歳である。彼らは全員がまだ20代。その志の高さに感心する。ますます応援したくなったよ。