いろいろな理由で買われているのは間違いなく、過去の記録を調べて慎重に準備する。特に今年4月に歌った曲の重複は極力避けた。
寒いが、時折雪がチラつく程度で路面状況は良好。夏とそう変わらない所要時間で、イベント開始15分前に先方に着く。
ステージからはブラインドとなるいつもの場所で機材を組み立ててスタンバイ。14時30分から施設側のイベントが始まり、終了後ただちに機材一式を運搬移動する。予定より少し早い14時42分からスタートした。
先方の希望通り、15時20分までの38分で12曲を歌う。
「高校三年生」「二輪草」「ソーラン節」「ここに幸あり」「君恋し」「月の砂漠」「故郷」「矢切の渡し」「いい日旅立ち」「誰か故郷を想わざる」「上を向いて歩こう」「まつり」
クリスマスはひと月先だが、中旬くらいから介護施設の飾りつけはクリスマス一色に変わった。街の商戦と同じで、だんだん早くなる傾向だ。
クリスマスソングはさすがに早すぎるので、冬から春にかけての曲を中心に構成した。
3曲目には当初「お座敷小唄」を予定していたが、当日になって気が変わり、「ソーラン節」に変更。同じく「リンゴの唄」を予定していたラストも当日になって「まつり」に差し替えた。
理由は特にないが、歌い始めてからその場の「空気」のようなもので決めた。多くの場合、その判断に外れはない。
誕生会にはライブ中にケーキと飲物が出されるのがこの施設の特徴。サービスする職員さんの動きが慌ただしく、出だしの数曲は少なからず影響を受ける。
2週間前に歌った系列の別施設で、前半に叙情系の曲を配置して失敗した経験を活かし、3曲目までは穏やかな曲調を避けた。
この目論見はおおむね当たって、4曲目あたりから会場の雰囲気が落ち着き始め、「君恋し」で完全に場をつかんだ。続く童謡2曲も当たって、共に歌う声が多数。その勢いでラストまで突っ走るはずが、「矢切の渡し」あたりで遅れて参加する利用者がいて、再び場が落ち着かなくなる。
テーブルの一角で、歌そっちのけでおしゃべりに興ずる動きがあり、ライブ進行は一段と難しくなった。熱心に聴いてくれる方は確かにいたので、求められた時間まで淡々と歌い切るのみと、この時点で腹をくくる。
場が劇的に再反転したのは、ラスト間近の「誰か故郷を想わざる」から。戦中の懐メロだが、系列の他施設では評価の高い曲。この施設で歌うのは初めてで、一抹の不安もあったが、抜群の反応だった。この時期の歌をもっと掘り起こす必要がありそうだ。
ラスト2曲はその勢いのまま一気に乗り切る。数日前からカルピスの「ほっとゆずかりん」を飲み始めたのが効いたか、久しぶりに喉の調子はピークに近く、歌いながら順に会場を見渡す余裕さえあった。
終了後に最前列に座った女性からアンコールらしき声も出たが、進行の方が気づかずに終了宣言。惜しいことをした。
短い間隔で沈んだり浮いたりを繰り返す忙しいライブだったが、じっと耐えてどうにか盛り返した感。終了後に声をかけてくれる方がいつもより多かった事実が、ライブの出来を物語っている。