2016年1月27日水曜日

定番無視の新路線再び

 今年最初の介護施設系ライブを、市内のデイサービスで実施。昨年10月にネット経由で最初の依頼があり、翌11月も続けて依頼された。スケジュールの都合でお受けできなかったが、12月にも依頼があった。そして今回の依頼というわけで、つまりは4ヶ月連続の依頼があったことになる。
 全国展開の施設で、市内の系列施設でも数多く歌っているが、これほど続けざまの依頼は例がない。あまりに頻繁だとすぐに飽きられてしまうので、その危険性は率直に先方にも伝えた。しかし、それでも依頼は続く。
 こうなればどこまで続けて演れるのか、逆に好戦的な気持ちになり、あれこれ考えずに引き受けることにした。

 とは言いつつも、毎回利用日を変更して聴きにくる熱心な方も多くいて、飽きられない工夫はしたかった。先方は「同じ曲でもいいですよ」と言ってくれたが、甘えたくない。
 定番曲のやり繰りでは乗り切れないのは明らかだったので熟慮のすえ、昨年のデイサービス年末ラストライブで思いがけず評価の高かった、「介護施設の常識を覆したセットリスト」を再び試みることにした。「聴き手の嗜好を気にせず、自由気ままに歌う」という新路線である。
 寒さも和らいで、冬とは思えない温暖な日和。定刻の14時から歌い始める。先の新路線メニューを参考に、およそ45分で13曲を歌った。

「北国の春」「白い想い出」「銀色の道」「さくらさくら」「さくら(直太朗)」「仰げば尊し」「愛燦々」「酒と泪と男と女」「宗右衛門町ブルース」「なごり雪」「虹と雪のバラード」「小樽のひとよ」「また逢う日まで」


 いわゆる「介護施設・定番ソング」は、1曲目の「北国の春」くらい。他はチカチカパフォーマンスでよく歌っている昭和歌謡とフォークを自由にミックスした構成である。普段は必ず入れる民謡や聴き手参加型の曲も、今回はあえて入れなかった。
 しかし、全く好き勝手にセレクトしたわけではなく、過去に一度は介護施設で歌ったことのある曲をベースにし、季節感もある程度配慮した。過去2回で利用者の嗜好がニギヤカ手拍子系ではなく、静かな傾向の曲を好む印象がしたので、全体を叙情系の強い曲調でまとめた。

 系列の他施設で受けたとはいえ、果たしてこの施設でも新路線が通用するのか、やってみるまで不安があった。しかし、手応えはあった。
 手拍子やかけ声は全く期待してなく、単純に歌そのものを聴いてもらうというスタイルである。つまりは聴き手を年寄り扱いせず、ごく普通の聴き手として「オトナ扱い」した手法だ。介護度の低いデイサービスだから、そんな冒険も可能となる。
 それぞれの曲に反応があったが、「銀色の道」「仰げば尊し」「愛燦々」「宗右衛門町ブルース」「なごり雪」「虹と雪のバラード」「また逢う日まで」には、特に強い手応えがあった。
「仰げば尊し」では涙を流して共に歌う方が多数。「また逢う日まで」では、この日初めて手拍子を誘導したが、それまで溜まっていた静ひつな感情が爆発するかのように、最高の盛上がりで終わった。

 終了後も「よかったよ〜」との声が会場のあちこちから届く。定番メニューをやり繰りして臨み、いまひとつ反応が弱かった過去2回にはなかったことで、この新手法があたっていたことを知る。
 しばしの歓談のなか、「次は『岬めぐり』が聴きたい」と、かなり高齢の女性から信じ難いリクエストが飛び出す。臆せずにフォーク系やJ-POPの曲をどんどん介護施設でも歌ってみるべきだ。そして時にはオリジナルも。
 この種の曲が今後使えるとなると、ライブ構成の自由度は格段に広がる。時代は見る間に変わっている。