窓ガラスのマスキング作業や下地のゴミ取り清掃をやり、ローラーでは塗れない細部をまず刷毛で塗り始めたが、1時間ほどで終わって合流するはずの草刈り部隊10人ほどが、なかなか現れない。少人数では効率が甚だ悪く、午後からグループホームお祭りライブで歌う予定があり、なるべく早く終わらせたいが、一向に作業は進まない。
10時半近くになってようやく人数が増え、そこから一挙に作業は捗って12時ちょうどに全作業を終えた。
あわてて家に戻り、ペンキで汚れた手を洗いつつ、昼食の準備。ソウメンを慌ただしくかきこみ、この日一緒に歌う予定の息子と軽いリハをやるつもりで電子譜面搭載の中華Padのスイッチを入れると、バッテリー残量がわずか。前日の練習後に充電するのを、すっかり忘れていた。
やむなく練習は紙の譜面でやることにし、そのわずかな時間に充電。不安のある曲だけを集中的にやり、梱包を済ませてギリギリに中華Padのケーブルを外したら、70%まで充電が回復していた。これだけあれば何とかやれる。
施設は車で5分の近場にあるので、開演15分前には到着。久しぶりに再会する職員の方に息子を引き合わせ、ただちに機材を組み立てた。
いつも雨にたたられるイベントだが、この日に限っては例外。暑いほどの陽射しが照りつける絶好の日和である。ライブは屋外に準備されたステージで問題なくやれた。
2組出演するうちの1番で歌うことになり、少し遅れて13時13分頃から開始。先方の希望通り、20分で以下の6曲を歌った。
「恋のバカンス」「バラが咲いた」「カントリー・ロード」「幸せなら手をたたこう」「上を向いて歩こう」「まつり」
寝不足と予期せぬ暑さ、そして長時間の奉仕作業という三重苦が重なったが、声はまずまず出た。この施設では8年ぶりに一緒に歌う息子の前で、まずい姿は見せられない、という緊張感も自分を支えていたかもしれない。
遅い夏期休暇をとって2日前から帰省し、入念に準備を重ねてきたので、息子との息はぴったり。ミスは皆無に近く、会場の反応も抜群によい。「バラが咲いた」ではため息が湧き、「カントリー・ロード」では聴き手の一部が涙を流した。「まつり」では歌い終える前に大歓声が上がる。体調は最悪でも、ステージは会心に近かった。
6曲のうち、初めて合わせる曲が3曲あったが、いずれも無難にまとめた。演奏時間が流動的だったので、全部で9曲準備していったが、歌えなかった3曲は眠らせるに惜しい仕上がりなので、次なる機会のためにとっておく。
例年は子供の姿も多いので、月初めの子供対象のライブで評判のよかった「ビリーヴ」を5番目に歌う予定でいたが、この日に限って場内に子供の姿は皆無。咄嗟の判断で、無難な「上を向いて歩こう」に差し換えた。
ユニットとしての魅力を充分に表すべく、予備曲も含めて全曲を二重唱にアレンジして臨んだ。同じ歌でも私のソロとはひと味違って聴こえたはず。アレンジには息子の意見が多く入っていて、互いに議論を闘わせつつ進める。音楽に関する議論に親も子もなく、互いに安易な妥協はしない。
終了後に声をかけてくださる方が多数いて、「歌も素晴らしいが、こうして親子でボランティア活動をする姿勢そのものが素晴らしい。我が子にもぜひ教えてあげたい」という声が一番うれしかった。
さらには、若いヘルパーさんから「弾き語りの方法をぜひ教えて欲しい」と言われ、ちょっと考えてしまった。私と息子の関係を知らない数人から、「お弟子さんですか?」と尋ねられたので、そんな話につながったのだろうか。
以前からこうした依頼は散発的にあったが、今年になって同様の声が急増している。「若い世代に手法を伝えてはどうか」と、中高年世代から進言されたこともある。いろいろ問題はあるが、基本的に教えるのは好き。介護施設系ライブ限定なら、種々のノウハウを伝えることは可能かもしれない。