2013年1月27日日曜日

同姓同名

 自分と同姓同名の人を3人知っている。姓も名も、そうありふれたものではないと思っているが、それでも3人もいることに驚く。日本中の戸籍を仮に調べあげたら、おそらく100人はいそうだ。

 最初に遭遇したのは、上京して就職した会社の近所。営業回りの社員から、「お前、駐車場借りてる?」と不意に尋ねられた。車はおろか、免許すらまだ持っていない頃のこと。その旨を説明すると、「お前の名を書いた駐車場を見かけた」という。
 何かの見間違いだろうと聞き流しておいたが、しばらくしてまた別の社員から、全く同じことを問われた。その駐車場は借主の名をアスファルトに大きく記すシステムで、嫌でも目につくのだという。場所を教えてもらったが、少し遠いので確かめには行かなかった。
 しばしの時間が経ち、会社近くの郵便局に金を預けに行った。すると、職員が私の通帳と顔を交互にシゲシゲと眺め回す。失礼ですが、どちらにお住まいですか、お勤めは?などと、普通ではあり得ない質問を浴びせてくる。
 何となく疑われている気がしたので、写真つきの社員証を提示すると、分かりましたと、ようやく納得した様子。いえ、実は…と、何かの書類をチラリと見せてくれた。そこには全く覚えのない書類に、私と同姓同名の記載がある。
 すぐ近くに住んでいる人だと職員はいう。ここでピンときた。おそらく駐車場を借りているのは、そのもう一人の私である。半径数100メートルの狭い範囲に、そうありきたりではない同姓同名の男が2人住んでいるという偶然。

 後日、例の駐車場も確かめに行った。確かに私の名があったが、何だか自己の存在自体が脅かされたようで、あまりいい気持ちはしなかった。


 時は流れ、インターネットなるものが登場した。かなり早い段階からホームページを作り、仕事や趣味にも役立ててきたが、本を出版したり建築設計の仕事を広くネットで請け負ったりしていると、自分の評価が気になることがある。
 本人の目の届かない範囲で、何かしらの悪い評判がたってはいないか…。もし見つけた場合、何らかの手を打つ必要がある。そんな理由から、自分の名や事務所名、そしてサイト名は検索サイトで定期的に調べていた。
(これを「エゴサーチ」と揶揄するむきもあるが、それはさておこう)
 すると、ネット上でも同姓同名の方が2人見つかった。おそらく20代に遭遇した方とは別人で、なぜか2人とも大学の先生であった。(教授と准教授)
 さらなる偶然は、そのうちの1人が学術系の本を出版していて、アマゾンで名前を検索すると、両者の本が表示される。知らない人が見ると、随分ジャンルの異なる本を出しているな…、と思い違うかもしれない。
(私の本はサッカー子育て関連のほうです)

 3人とも直接会ったことはないが、まあ会いたいとも思わない。ちなみに、妻は結婚前も後も、一度も遭遇したことがないそうだ。姓はともかく、名が非常に珍しいせいだろう。といっても、キラキラネームではない。もちろん。