試してみたいことがいくつかあったので、無理を承知でエントリーすることにした。
腰の傷みは前日よりもなぜか悪化していた。加齢と共に、ダメージは2日後あたりにやってくる。悲しいが、それが現実だ。
たまたま休暇で家にいた妻が、腰をかばいつつ出かけようとする私を見かねて荷物係を進言してくれたが、妻も風邪気味の身体にムチうって仕事を続ける身。慎んで辞退し、いつものように1人で会場に向かった。
この日は即興ダンスの宮脇さんとの共演。場所は前回と同じ北大通広場だが、私の到着が先だったので、持ちにくい大型案内板2つを抱え、遠い会場へとトボトボ歩く。
さすがに腰への負担が大きく、途中で2度も休んでしまった。
準備中に宮脇さんが現れ、打合せの結果、なるべく長い時間を休まずにやりたいという宮脇さんの希望を受け入れ、互いに1ステージのみをやや長めにやって終了することにした。
最初は私が演ることになり、14時15分から約40分で、以下の12曲を一気に歌う。(※は初披露)
「いいじゃないの幸せならば※」「人形の家」「山羊にひかれて※」「抱きしめて(オリジナル)」「男と女のお話※」「夜が明けたら※」「横須賀ストーリー※」「ラヴ・イズ・オーヴァー」「時の過ぎゆくままに」「白い冬」「虹と雪のバラード」「冬のリヴィエラ」
この日の前半8曲は「暗くてマイナーな曲」を意識的に集めて構成した。普段は人前では歌わない、長く封印していた曲を連発した。初披露が多い所以である。
聴き手が立ち止まるかどうか、はたまたオリジナルCDが売れるか否かは度外視で、自分がただ歌ってみたい曲をワガママに並べた。そんなマニアックな姿勢を象徴するように、ストリートでは極めて稀な座って歌うスタイルをとった。
椅子はこの日のために作ったDIYの木製。自宅でかなり歌い込んでいたので、40分間ぐらつくこともなく、安定して歌えた。
マイナーな内容であることを暗示させる意図で、椅子はあえて通りに対してやや斜めに置いた。結果としてスピーカーの音が聞き取りやすく、かってないほど歌いやすかった。
不思議なことに、いざ歌いだすと腰の痛みはどこかに消えてしまい、1時間でも歌い続けられそうな感じだった。
意に反して、2曲目の「人形の家」あたりから人がじわじわ集まってきた。前回も感じたが、この曲は非常に強い。決して明るい曲調ではないが、なぜだろうか?
その勢いで「山羊にひかれて」を曲紹介のみで続けたが、打って変わって次々と人が消えだし、終わる頃にはわずか2人まで激減。好きな曲だが、これまた理由は分からない。ここでひるむことなく、オリジナルの「抱きしめて」を淡々と歌う。するとなぜかまた人が増えだし、一気に10人を越す。
あくまで自分のペースを貫くのがこの日のテーマだったので、人の動きはあまり気にせずに歌い継いだが、全く期待してなかった「男と女のお話」「夜が明けたら」に、予想外の強い反応があって驚く。
「夜が明けたら」では、「浅川マキ、最高だった」と、わざわざ近づいて声をかけてくれた中年男性もいたほど。マニアックな曲でも聴いてくれる人はちゃんといる。何事も思い込みや決めつけは禁物であると、この日学んだ。
最後の4曲は2ステージ目として準備していた曲の一部で、実績ある曲ばかり。久しぶりに20名を越える方々が、最後までじっと耳を傾けてくれた。天候が穏やかだったせいか、通りをゆく人々の足取りは緩やか。中高年世代も多く、ゆっくり歌を聴いてくれる気分が満ちていた。
告知はほとんどしなかったためか、売れたCDは1枚だけだったが、いろいろと収穫の多い一日だった。暗くてマニアックな構成、またいつかやろうと思う。