2010年5月29日土曜日

ひまわり訪問ライブ

 近隣の老健施設での訪問ライブが無事に終わった。いつもより早めに起きて最終リハをざっとやる。午後2時開始だが、初めての施設なので、少し早めに出た。
 開始20分前には先方に着く。自宅とは別の区だが、車だと20分もかからない。担当のHさんと簡単な打合せをし、場所を決めてすぐにPA等をセットした。
 10分前にはスタンバイしたが、すでに会場には30名を越える人が集まっている。予定を5分早め、13時55分から歌い始めた。

 事前情報で、介護度の低い元気な方(要支援1〜2)が大半、と聞いていたので、プログラムは慎重に構成した。最初の4曲で様子を見て、その反応で以降の歌の出し入れを調整しようと考えたのだ。
 その4曲とは順に、「北国の春」「花(滝廉太郎)」「恋のしずく」「お富さん」。クセのない演歌→唱歌→艶っぽい新しめの歌謡曲→民謡に近い演歌、といった位置づけである。


 出だしの「北国の春」はリスクの少ない訪問ライブの定番曲で、1〜5月の訪問ライブでは同じ場所でない限り、1曲目には必ず歌う。起承転結の「起」に相応しい曲で、高齢者対象の訪問ライブを今後やってみたいと考えてる方は、ぜひともレパートリーに加えることをお勧めする。
 結果として、4曲とも受けた。最もリスクのあった「恋のしずく」も含め、間奏中にもさざ波のような拍手が起きるという、信じがたい反応。あとで聞いたことだが、開所以来初めての外部ボランティアによる演芸会だったそう。「新鮮度」という部分で、かなり得をした。

 以降、新旧とりまぜた構成で、トントンと歌い継ぐ。どのようなライブでもそうだが、会場の中で真剣に聴いてくれる人をいち早く見つけ、その人に気持ちをぶつけるように歌うと、だいたいうまく運ぶものだが、今日はその「真剣に聴いてくれる人」が多数いた。
 つまり、「どこを向いて歌っても聴いてくれる人ばかり」なのである。やりがいのある場だった。
 13曲をぴったり40分で終え、素早く撤収しようとしたら、会場の拍手が鳴り止まない。担当のHさんは終わらせたい感じだったので構わず作業を続けたが、会場の後ろのほうから期せずして、「アンコール!」の声。それも複数である。
 私の場合、訪問ライブではアンコールはあまり出ず、仮に出たとしても、職員の方がリーダーとなり、「ぜひあと1曲歌っていただきましょうか」といった流れが普通だった。
 施設には決められたスケジュールがあり、それを滞りなく仕切るのが職員の務めだからで、アンコールをするか否かの判断も、おそらくそれに含まれるのだろう。

 しかし、「聴き手側からのアンコール」は記憶にない。聴き手の介護度が低いので、歌い手と聴き手が対等なごく普通のコンサートと考えると、それも納得がゆく。横にいたHさんと打合せ、いったん抜いたケーブルを再セット。短い曲を1曲という条件で、「宗谷岬」を歌った。
 準備はしていたが、いろいろな事情で外した曲のうちの1曲である。曲調といい、季節感といい、締めくくりにはピッタリ収まる選曲だった。
 終了後、責任者のTさんに応接室に招かれ、ねぎらわれた。これまたあまりない経験だ。Tさんから、「もしかして以前に"かぐや姫"を歌ってませんでしたか?」と、いきなり問われた。
 聞けばTさんも高校時代に"かぐや姫"や"風"のコピーバンドをやっていて、伊勢正三の大ファンだとか。私の歌を聴いていて、何か感ずるものがあったらしい。なかなかスルドイ方で、これまでの活動歴などをざっと話すと、「次回はぜひ"かぐや姫"を歌ってくださいよ」と、真顔で言われた。

 ひとまず「北の旅人」「僕の胸でおやすみ」なんかを次回やりましょうか、ということになったが、本当に実現すれば画期的なこと。
 場の反応から、かなり新しい歌でもいけそうな感触はあったが、介護施設でフォークを歌える日が、今年中にでもやってくるかもしれない。長生きしてよかったです。