2008年10月25日土曜日

私ノンフィクション

「やるべき作業」として机の上に長らく積んであった(といっても、10日ほどだが)資料のうち、来年出版予定のノンフィクション作品の校正作業をようやく片づけた。

 9人の共著だが、企画会議で出すことが決まったのが、何と4年前。商業出版ではなく、限りなく自費出版に近い形なので、制約なしで自由に書ける反面、締切はあってなきがごとし。どうしても作業は遅れがちとなる。
 私は決められた通りに2005年の秋に2作、30枚を入稿済みだが、その校正が3年たってようやく上がってきた。実に気の長い話で、せっかちな私はひたすら忍従を強いられているが、会では新参者の若造なのでこれもやむを得ないこと。


 内容は「北の地に足跡を残した異国人」という切り口で、私はスイスの建築家と、アメリカの芸術家を担当した。何冊もの資料を繰り、足を使ってあちこち取材した労作だが、書いてから3年もたつと、原稿にもややタイムラグが出来てしまっている。その擦り合わせが校正の中心で、文体そのものは練りにねっているので、基本的に修正はない。
 今回、客観性の要求されるノンフィクションではあまりやらない「文中で書き手の存在を鮮明にする」という手法をあえてとった。いわば「私小説」ならぬ、「私ノンフィクション」とでもいうべきもので、上梓の折には、先輩の先生方から何か指摘されるかもしれない。
(たとえば「あれは邪道だよ」とか…)

 どんな世界でも、これまでとは違うことをやると必ず周囲の抵抗があるもので、ある程度の覚悟はしている。
 3年ぶりに作品を読んだが、正直に書くと、自分の作品で泣ける。そんなふうに書いた。冒険だが、この手法は間違っていない気がする。早く世に問うてみたい。