9人の共著だが、企画会議で出すことが決まったのが、何と4年前。商業出版ではなく、限りなく自費出版に近い形なので、制約なしで自由に書ける反面、締切はあってなきがごとし。どうしても作業は遅れがちとなる。
私は決められた通りに2005年の秋に2作、30枚を入稿済みだが、その校正が3年たってようやく上がってきた。実に気の長い話で、せっかちな私はひたすら忍従を強いられているが、会では新参者の若造なのでこれもやむを得ないこと。
内容は「北の地に足跡を残した異国人」という切り口で、私はスイスの建築家と、アメリカの芸術家を担当した。何冊もの資料を繰り、足を使ってあちこち取材した労作だが、書いてから3年もたつと、原稿にもややタイムラグが出来てしまっている。その擦り合わせが校正の中心で、文体そのものは練りにねっているので、基本的に修正はない。
今回、客観性の要求されるノンフィクションではあまりやらない「文中で書き手の存在を鮮明にする」という手法をあえてとった。いわば「私小説」ならぬ、「私ノンフィクション」とでもいうべきもので、上梓の折には、先輩の先生方から何か指摘されるかもしれない。
(たとえば「あれは邪道だよ」とか…)
どんな世界でも、これまでとは違うことをやると必ず周囲の抵抗があるもので、ある程度の覚悟はしている。
3年ぶりに作品を読んだが、正直に書くと、自分の作品で泣ける。そんなふうに書いた。冒険だが、この手法は間違っていない気がする。早く世に問うてみたい。