引き合いはネット経由であったが、聞けばボランティア演者を受け入れるのは初めてという。電話のやり取りの中で担当者が不慣れな印象がしたので、ライブの進行に関し、こちらからいろいろと提案して進めた。
施設は札幌の南端にあり、北端にある我が家からは市内で最も遠い位置にある。普通に走ると都心を経由することになり、1時間はかかる。経路を慎重に検討し、都心を回避して豊平川右岸の裏道を通って向かうことにした。
12時45分に家を出たが、到着は13時35分あたり。所要時間50分で、多少は時間短縮できたかもしれない。
施設はデイサービスとショートステイを併設した小規模多機能型。聴き手は併せて40名ほどで、男女比は4:6ほどか。他施設と比べ、男性の比率が高めなのが特徴だった。
予定ぴったりの14時から始まり、想定外のアンコールなどあって、休憩なしの65分で20曲を歌う。
《セレクトタイム》
「高原列車は行く」「おかあさん」「お富さん」「バラが咲いた(歌詞指導)」「幸せなら手をたたこう」「高校三年生」「荒城の月」「時の流れに身をまかせ」「星影のワルツ」「浪花節だよ人生は」
《リクエストタイム》
「北国の春」「おふくろさん」「ああ上野駅」「いちご白書をもう一度」「矢切の渡し」「川の流れのように」「ブルー・シャトー」「今日でお別れ(初披露)」「青い山脈(歌詞指導)」「月がとっても青いから(アンコール)」
1時間のライブが先方の希望で、後半をリクエストで進めることにする。前半の構成には悩んだが、初めての施設とあって冒険は避け、一般的なデイサービスの構成で臨むことにした。
叙情系の曲は少なめにし、7割をニギヤカ手拍子系の曲にしたが、この目論見は当たった。1曲目からいきなり手拍子が飛び出す。「バラが咲いた」は数少ない叙情系の曲だが、手拍子しつつ共に歌う人もいたので、歌詞指導しながら進めた。
その後、大半の曲に手拍子が飛び出し、非常にやりやすい進行となった。アクセントとして入れた叙情系の「荒城の月」「星影のワルツ」の反応も悪くなく、つまりは「何を歌っても受ける」状態だった。
喉の調子はあまりよくなく、1曲目のピーク音で一部声が割れるというアクシデント発生。5〜6月の悪夢が一瞬胸をよぎったが、以降の数曲は高音部に細心の注意を払って進め、どうにか最悪の事態は回避した。
出掛けに雑事でバタバタし、充分なリハーサルが出来なかったことが直接の原因。まだまだ修行が足りない。
後半から高音が安定し始め、場のあと押しもあってじわじわと乗った。リクエストはおおむね他会場と似た傾向だったが、終了直前に高齢の男性から「今日でお別れ」の珍しいリクエストが出て驚く。
好きな曲だが、今回が初披露。これが我ながら出来がよく、場は水を打ったように静まり返る。感極まって涙をぬぐう女性もいた。一転して「青い山脈」を全員で賑やかにシングアウトし、ラストの伴奏にかぶせてお礼のメッセージを送ると、盛大な拍手で場の気分は最高潮に。
拍手はそのまま収まらず、誰からともなく「アンコール!」の声が飛び出し、それが手拍子と重なった。全く打合せにない自然発生的アンコールで、これまた稀な現象。ありがたく「月がとっても青いから」で収めさせていただいた。
機材をまとめて退出する際にも盛大な拍手で送っていただく。初めてのボランティア受入れとは思えない盛り上がりようで、職員さんも驚いていた。
10日ほど前にも別の介護施設で似たシーンがあったが、今年の敬老月間はいろいろとツキにも恵まれている。