穏やかな晴天で、明日からまた天気が崩れるという予報である。妻を伴い、会期末が迫った札幌国際芸術祭会場のひとつであるモエレ沼公園に、遅まきながら行ってみることにした。
3年前の初回開催時には、チカホや大通りなど、丸一日を費やして回った。チカチカパフォーマンスの活動の一環として、アカプラに設置された参加作品「一石を投じる」の前で歌ったりもした。
2度目の今回はいまひとつ興味が湧かず、何も観ていなかったが、せっかくの機会である。せめて直近の会場くらいは観ておこうかと重い腰をあげた。
モエレ沼公園には車で15分。晴天にも関わらず会場はガラガラで、駐車場も公園に近い場所に停められた。まずはモエレ山に設置された作品を観る。
作品といっても、山の北側斜面から頂上にむかって、古い自転車100台ほどが停めてあるだけのもの。登るのが億劫で斜面の途中でやめたが、作品名や作品の趣旨は不明。まあ、いちおうは芸術作品なので、観る側それぞれが勝手に推測すればよい。
私には乗り手のいない自転車が、何らかの上昇志向にかられて、我先にと争って頂上を目指そうとする現代人の悲しい性(サガ)を象徴しているかのように思えた。
自転車は転倒や転落を防ぐよう、鉄製の頑丈なプレートに前後をボルト止めされていた。
(持ち主の痕跡がどこかに残っているのでは?)と数台を調べたが、見つからなかった。プライバシー面での配慮なのだろうが、ちょっと残念。
山を下りて南へ回り、ガラスのピラミッドへ正面から入る。入口に芸術祭の看板が設置されているが、ここでも人影はまばら。
無料で入れる1階では、100台くらいの中古レコードプレーヤーが細いパイプの上にランダムに設置されている。全てのプレーヤーに電源が供給されていて、それぞれが時折回転して不規則な音(音楽ではない)が鳴るしかけ。
これまた趣旨がよく分からないので勝手に解釈すると、役目を終えたかっての文明機器による魂の叫びのようなものか。(それがどうした?)と問われると、答えに窮するが。
2階にも作品があったが、そこは有料とのことで特に観たい気も置きず、そのまま帰路につく。
久しぶりに行ったモエレ沼公園は、以前よりも森が深くなった印象がした。芸術はさておき、落ち着く場所であることは確かだ。