2016年3月31日木曜日

突発的シングアウト

 第9期ラスト、そして3月4度目となるチカチカパフォーマンスに参加。昨年は一度もなかった月に4回のエントリーで、今年は介護施設系の依頼がそう多くないことが大きな理由だ。
 チカホでの年度末と年度始めの集客には例年苦戦している。そこで打開策として、前回試みてある程度の手応えを感じた「座って歌う」スタイルを、今回も続けてやってみることにした。機材にも修正を加えたので、はたしてうまく機能するのか確かめる意図もある。

 街から雪が完全に消え、道路状況が改善されたせいか、前回よりもかなり早く、正味50分で事務局に着く。
 この日も枠いっぱいの3組がエントリーしていたが、なぜか到着は私が一番。看板2つを抱えて指定された地下への階段を下りる。初めて実戦で試すブーム式電子譜面ホルダーや、座面にクッションを加工した組立式椅子の設置に手間取り、始めたのは14時5分くらいからだった。
 およそ30分弱で8曲を歌う。(※はリクエスト)

「恋心」「ケ・セ・ラ・セラ」「恋のしずく」「恋(初披露)」「恋の町札幌※」「恋の季節」「上を向いて歩こう※」「シクラメンのかほり※」
 座って歌うスタイルの神通力なのか、1曲目から立ち止まる人がチラホラと現れた。2曲歌ったところで、70代と思しき男性から「演歌は歌わないの?《湯の町エレジー》とか…」と問われる。残念ながらレパートリーになく、リストを見てもらった結果「恋の町札幌」を歌うことに。
 いい感じで歌っていると若い男性も近寄ってきて、「裕次郎、いいですね〜」と声をかけてきた。最近は市民との交流を第一に考えているので、最初の男性を交えて、あれこれと会話を交わす。


 忙しいのか、2人の男性はここで場を離れる。この日は「こ」から始まる曲の前後を適当に歌っていたが、続けて「恋の季節」を歌っていると中年女性が近寄ってきた。やはり立って歌うより座って歌うほうが、聴き手が近寄ってくる確率がぐんと高まる。
(なぜだろう…)と改めて考えてみたが、座って歌うことで電子譜面の延長線上に通りを往くの顔が見えることに気づいた。歌いながらも聴き手の動きが手に取るように分かり、視線も合いやすい。聴き手との心理的距離感が縮まるはずだ。

 かの中年女性からの「上を向いて歩こう」は、チカホでは初めて出たリクエスト。「お好きなんですか?」と声をかけつつ譜面検索。歌い始めると一緒に口ずさんでいるので、途中から口頭で歌詞指導しつつ歌い進む。女性は気持ちよさそうに手でリズムを取りつつ、最後まで歌ってくれた。
 この様子を見て5人ほどの家族連れが立ち止まり、一緒に歌ったり手を叩いたりしている。つまりは突発的な「歌声サロン」の場となったわけで、無理に仕掛けなくても、その気になればこうした自然の流れの中で聴き手を巻き込むことができるということだ。
 共演の若手ジャグラーが現れたので場を交代し、休憩後の15時15分から第2ステージを始める。およそ30分弱で10曲を歌う。

「大空と大地の中で」「野ばら」「愛燦燦」「365日の紙飛行機※」「ボラーレ」「別れの朝」「時の流れに身をまかせ」「荒城の月」「五番街のマリーへ」「また逢う日まで」

 第2ステージは来週に迫った別のコンサートのリハーサルのような位置づけだった。しかし、これまた1曲目から立ち止まる人が続出した。
 そのうちの若い男性の顔にどこか見覚えがある。曲間で「どこかでお会いしてますか?」と問うと、「はい」と応ずるが、どこの誰であるかは名乗らない。しかし、その受け答えで、5年前に地区センターライブで何度かお世話になった方だと思い出す。
「…さんですね?」と問うと、そうです、よく分かりましたね、と嬉しそうな顔を見せた。お互いに短く近況を伝え合う。不思議な偶然である。


 直後に「愛燦燦」を歌っていると、女子中学生5人組がリクエスト用紙を手にして押し問答しているのが視野に入る。
 1番の途中で声をかけてきたので、歌を途中で打ち切って応対。大人ならば歌い終わるまで待ってくれるが、中学生なら仕方ないか。

「何かリクエストですか?」と問うと、「AKBお願いしま〜す」ときた。これまたチカホでは初めて飛び出したリクエストで、さっそく歌い始めるとかなりの人が集まってきて、自然発生の手拍子まで始まった。なぜか小さな子供にも受けている。
 特に歌詞指導はしなかったが、けっこうな人が一緒に歌ってくれた。第1ステージに続き、突発的シングアウトとでも言うべきか。
 それにしても、「上を向いて歩こう」や「365日の紙飛行機」がこれほど世代を越えて人気があるとはオドロキである。よく心に留めておこう。
 このところ停滞気味だったが、前回に引き続き、この日もオリジナルCDが売れた。それやこれやで、数ヶ月ぶりの売上げを記録。詳しく書けないが、過去に一度しかなかった滅多にないことも起きた。もしかすると、これも「座って歌う」ことと関係があったかもしれない。

 今回初めて試したブーム式電子譜面ホルダーと組立式椅子のクッションは、全く問題なく機能した。組立てを急ぎすぎて指に切り傷を作ってしまったが、当分はこれでいけそうだ。
 反面、ヒモ式のLED灯はまるで目立たず、途中から片づけてしまった。もっと明るいものでないと、使い物にならない。
 いろいろあったが、オーデション通過後に実証試験していた聴き手との新たな交流方法に、一定の方向性が見えたように思える。