2016年3月27日日曜日

ハズレは許されない

 このところしばらく機会がなかったが、5週間ぶりに市内の介護施設誕生会で歌った。
 訪問先は10年前にネット経由で初めて依頼された有料老人ホーム。ここで歌うのは4度目で、市内にある系列施設からは、その後定期的に依頼が続いている。

 施設長さんは10年前に初めて歌った際は、まだ主任だった方。その後移動や昇進を重ねて管理職まで上り詰め、私の還暦コンサートにも来てくださった。
「久し振りですね〜」「あちこちでご活躍のようで」などと、出迎えてくれた玄関で親しく言葉を交わす。こんなとき、長い日々の積み重ねを感じずにはいられない。
 14時15分から施設側のイベントがまずあり、14時32分からライブ開始。15時の終了時間を厳守ということで、およそ27分で9曲を歌った。

「北国の春」「宗谷岬」「お富さん」「二輪草」「長崎の鐘」「上を向いて歩こう」「月の沙漠」「誰か故郷を想わざる」「東京ラプソディ」

 介護施設で歌うのが久しぶりで、それも最近はデイサービス系が大半を占める。有料老人ホームとなると前回がいつだったのか、思い出せないほどだった。
 デイサービスと比べて定住性や年齢層が高い有料老人ホームは、たとえ勝手知ったる場であっても、構成は難しい。前回は2年前に歌ったが、記録を調べると「的が絞りきれず、非常に苦戦した」とある。


 前回も長いブランクがあり、叙情系なのかニギヤカ系なのか、古い歌なのか新し目の歌なのか、聴き手の嗜好がまるで読めなかった。今回も直前まで迷いに迷ったが、リスクを避けて古い曲と新し目の曲のミックスで臨むことにする。
 前回反応が弱かった「聴き手巻き込み型」の曲は外し、手拍子があってもなくてもどちらでも聴ける曲を選んだ苦心の構成となった。
 まるで初めての場のように手探りで歌い始めたが、期せずして1曲目からいきなり手拍子が飛び出す。リードしているのは前回より遥かに多く会場にいた職員のみなさんで、なんといつの間にか施設長さんまでその輪に加わっている。
 前回訪問時は施設長さんの赴任直後だったが、その後時を経て、運営手法が施設全体に周知徹底されたのかもしれない。

 こうした職員さんの積極リードは歌い手としては大変ありがたく、楽しい雰囲気でトントンと場は進んだが、中盤に入れた叙情系の曲「長崎の鐘」「月の沙漠」で場が少ししんみりした。「長崎の鐘」の手応え自体は決して悪くなかったが、もう少し早めに歌うべきだった。
 2つの叙情系の曲の中間に配置した「上を向いて歩こう」は、気分転換のつもりで前日になって急きょ差し替えた曲だったが、「長崎の鐘」の気分を場が引きずってしまった感じで、いまいちノリが悪かった。ここは「月がとっても青いから」「高校三年生」あたりが適当だった気がする。
 ラスト2曲で場の気分は盛り返し、楽しく終えることができたが、曲の配置構成は本当に難しい。
 ともあれ、長くお世話になっている施設長さんには喜んでいただき、どうにか顔をつぶさずに済んだ。路上ライブと違って、聴き手が最初から用意されている場は集客の心配がないので楽といえば楽だが、その反面「ハズレ」が許されないので、全く異なる緊張感がある。
(路上ライブでの「ハズレ」は、自己完結すべきものと考えている)

 歌い手としてはいろいろな場面でのバリエーションをせいぜい楽しむべきか。