2015年5月13日水曜日

支笏洞爺春巡り・後編

(前編からの続き)
 カルルス温泉「山静館」での一夜が明けると、前夜からの雨はカラリと上がり、見事な青空が広がっていた。

 早朝からまた温泉につかり、7時半から早めの朝食をとる。バイキングスタイルではなく、伝統的な和風旅館型。妻はテレビで韓ドラが観たいというので、その間私は横になってウトウトする。実に気ままである。
 9時半にチェックアウト。青空の下を登別温泉に向かって走る。

カルルス温泉近くの山々
日和山展望台から観た大湯沼

 温泉街の北端を通りぬけ、前回観たクマ牧場はパスして、倶多楽湖に抜ける観光道路を走る。地獄谷や大湯沼の奇勝を眼下に眺めながら、随所にある展望台で車を停めて景色を楽しんだ。
 人気のない深い森を進むと、やがて神秘の湖、倶多楽湖展望台に着いた。この湖には子どもたちが小さかったころ、家族キャンプに訪れた思い出がある。
 南側からの道を経由したので、展望台に来たのは初めてだが、水の色や外輪山の様子、周辺の木々など、上から見ると摩周湖に似た雰囲気だと思った。

 あとで知ったが、透明度は摩周湖と争うほどらしい。最大水深が摩周湖よりやや浅いその分、色の深みでは摩周湖が優っている気がする。


 あいにく三脚の用意がなく、シャッターを押してくれる人も周囲にいないので、手すりの丸棒の上にデジカメを置いてセルフ撮影した。今回の旅での、唯一のツーショット写真である。

 展望台を下りて湖岸に出たが、30年近く前に訪れたキャンプ場はすでに閉鎖されていた。一部は駐車場に変わり、山側にあった広場にはうっそうとした森が広がっている。岸辺には当時はなかったレストハウスが建っていた。(夏季のみ営業)
 獏とした時の流れを感じずにはいられず、妻とひとしきり感慨にふけった。

室蘭白鳥大橋

 登別温泉から国道36号に出て西に走り、私が学生時代の4年を過ごした室蘭に向かう。30年ほど前に家族キャンプの帰路に立ち寄って以来だが、当時はなかった白鳥大橋を観ることと、名物駅弁の母恋めしを食べるのが目当てだった。

 ちょうど昼時に着いたが、白鳥大橋の直下にある道の駅「みたら室蘭」で売っているはずの母恋めしが、なぜか見当たらない。ネット情報もあてにはならず、前日に続く肩透かしである。
 売店の女性に教えてもらい、入手可能だという近くの直営カフェに向かう。しかし、すでに売り切れ。その場で別の売店に連絡してくれて、3つだけ残っているという母恋駅売店に予約をした。


 来たばかりの道を戻り、昔の記憶をたどりつつ、母恋駅に到着。ようやく手に入れることができた。予約したので1個千円で買えた。
 地図を見ると、次なる目的地洞爺湖方面に向かうには、白鳥大橋経由のほうが近いことを知る。そこでまたまた道を戻って、道の駅「みたら室蘭」で母恋めしを食べることにした。
 弁当目当てに、右往左往させられたが、おかげで古い街並みの名残を発見したりし、懐かしい学生時代の思い出があちこちで蘇った。

 その母恋めし、好物のホッキ貝を使い、コンクールにも入賞した弁当だったが、正直いってちょっと期待はずれの味だった。全体的に旨味が足りない印象がする。妻は1個しか食べなかった。
 付け合せの燻製卵と燻製チーズ、ナスの漬物は美味い。まあ、話題の弁当をギリギリ食べられたのでよしとしたいが。
 14時に室蘭を出発。白鳥大橋を渡って洞爺湖方面へと向かう。風はなく、全く揺れないので、橋を渡っている感じがしない。しかし、眼下に広がる室蘭港の展望は素晴らしい。
 てっきり有料と思っていたら、なぜか無料だった。


 伊達を過ぎたあたりで、大粒の雨が突然降ってきた。朝のテレビで観た予報通りだったが、37号線から右折して洞爺湖に向かう途中にある昭和新山はパスし、遠くから山肌を眺めるだけにした。

 雨は次第に小降りになり、やがて洞爺湖畔に到着。友人へのお土産をどこかで買いたいと妻は言うが、なかなか適当な場所がない。湖を時計回りに半周し、ようやく「とうや水の駅」という施設を見つける。
 道の駅に近い印象で、ここで希望の土産を調達。事前の調べではこの近くにカフェがあるはずだったが、周辺を探索してみると、すでに閉店していた。今回はこの種の肩透かしが多い。物事を維持し続けるということは、想像以上に大変なことなのだろう。


 15時近くに湖畔を出発。お昼が簡単だったので、途中で珈琲タイムをとりたかったが、アテがない。中山峠に向かってしばらく走っていると、以前に何度か見かけたログハウス風のカフェがあった。一度も入ったことはないが、珈琲とピザがあるらしい。
 ドアを開けてみると、経営者らしき男性と客が一人。すべて地元産の素材を使ったピザが非常に美味かった。かなり大きめだったが、ペロリと平らげる。

「亜木人」というその店、ご主人が1年がかりで一人で建てたという。私よりやや若いが、同じ脱サラ組。開店後27年、無添加無農薬素材にこだわったパンやソーセージ、ピザを作り続けているとか。
 帰り際に言葉を交わしたが、父親が大工で、元の仕事が土木技術者という点まで同じだった。写真を撮りそこねたが、機会があればまた立ち寄りたい。
 16時に店を出て、230号をひた走る。雨も上がって渋滞もなく、17時には札幌中心街に入った。平日なので、当然ながら世間は仕事モード。自由業の気ままさで、ぜいたくな時間を過ごさせてもらった。

 あてにしていた店がなかったりの肩透かしはあったが、覚悟していた雨はうまく回避できて、おおむねよき旅だったといえる。
 総費用は妻の個人的土産代をのぞき、ガソリン代を含めて2万6千円弱。コースや宿、店の選択を含めた企画とコーディネートは私の担当だったが、妻にも好評だった。
 日々の節約や節制は、この種の「ハレの日」のためにやっているようなもの。今後も定期的に続けていきたい。
(2日目走行距離225km:合計走行距離380km)