「自由なスタイルで歌う」という自分のスタンスは保ちつつ、同時にそうした貴重な聴き手の方々にも配慮して活動を続けていきたい。
今回は他のパフォーマーの方(読み聞かせ)とエントリーが重なり、3時間枠を互いにどうやり繰りすべきなのか、初めてのことなのでよく分からない。
普段よりも早めに事務局に行き、率直に相談すると、「いつも遅く始める方なので、開始すぐには現れないと思いますよ」とのこと。それなら早めに始めて早めに終えてしまうに限ると、手続きを済ませてただちに地下へと向かった。
会場は過去に2度歌っている北端の北4条広場。真冬は最も寒い場だが、すでに冬の峠は越えている。到着は14時10分前で、素早く機材をセット。早めの14時5分から歌い始めた。
この日のテーマは「フォークとJ-POP」。新しく追加した案内板にもその旨を表示してある。冬から春への移り変わりを意識した選曲で、以下の16曲をいつものように休憩なしで一気に歌った。
「季節の中で」「面影橋から」「風」「卒業写真」「僕の胸でおやすみ」「雨ニモマケズ抄(オリジナル作曲)」「不思議なピーチパイ」「サボテンの花(リクエスト)」「青葉城恋唄」「異邦人」「どうぞこのまま」「時代」「あてもないけど」「少しは私に愛を下さい(リクエスト)」「夜明けのスキャット」「さくら(直太朗)」
1曲目を歌いだすと、いきなり人が集まってきた。見る間に数が増え、ざっと20人ほどに。35年前に友人の結婚式で歌って以来だが、さすがに千春は強いなと感心する。
その後、曲によって人は減ったり増えたりを繰り返したが、告知を見て足を運んでくれた方がかなりいたので、常時10名を下ることはなかったように思う。
「卒業写真」は遠方から来てくださった馴染みの居酒屋ライブハウスマスター夫妻に敬意を表しての選曲。ママさんが大のユーミンファンである。
この日は他にも2曲リクエストがあり、確実に聴いていただけるよう、後半に配置して備えた。「サボテンの花」と「少しは私に愛を下さい」がそれ。幸いにどちらもレパートリーに入っていた。
実は終了後にも別のリクエストをいただいたが、歌えなくとも練習を重ねてなるべく応じるように最近は努めている。そうすることで、自分の歌の幅が広がる気がする。
「青葉城恋唄」は本来夏の歌で、時期的には早すぎる。しかし、この日はチカチカパフォーマンスの3月最終日。東日本大震災の3/11が間近ということもあり、被災地関連の歌をどうしても歌いたかった。
事前のMCでもそのことに少しふれた。初披露だったが、うかつにも1フレーズ目で感極まって一瞬崩れそうになった。しかし、譜面に目を落とすことできわどく回避。ある種の「震災ソング」であることもあってか、通りを行く多くの人が足を止めてくれ、静かに集中して聴いてくださった。
自分としては被災地に対する鎮魂歌のつもりで魂をこめて歌ったので、それがその場に居合わせた方々の心に確かに伝わったと思う。よい選曲だった。
残り2曲になって「あと2曲で終わりです」と宣言する。急に終わると突然のアンコールが出るのを恐れてのこと。このときすでに別のパフォーマーの方が会場に入り、スタンバイ中なのが目に入っていた。長々と場を独占してはならない。
この日は長めの曲が多く、ラストの「さくら」を歌い終えると丸1時間が経過していた。寒暖の激しい気候のせいか喉の調子は決して万全ではなく、80%ほどの出来。しかし、集まってくださった多数の方々(30名は軽く越えていたらしい)の後押しもあって、気持ちでどうにか乗り切ることができた。
終了後、顔見知りの方々やこの日初めて出会った方々としばしの歓談。この風景も回を重ねるごとに定番スタイルになりつつある。
30分過ぎあたりから正面の床に座って熱心に耳を傾けてくれた若い男性が近寄ってきて、「すごく良かったです。握手してください」と手を差し出され、非常にうれしかった。
彼に限らず、この日は20~30代と思われる若い男女も数多く聴いてくださった。現状の路線を大きく変えるつもりはないが、取り巻く環境はじょじょに変わってゆく予感もする。当面はその流れに身を任せたい。