母はいつものように食堂の片隅で仲の良い友人と並んで座っていたが、旧姓で書かれたハガキを見せると、すぐに親戚のことを思い出したようだった。(ちなみに、母の旧姓と同じである)施設では名前でしか呼ばないので現在の姓はときどき忘れても、不思議に旧姓(非常に珍しい姓)だけは覚えている。それを見越した親戚の細かい配慮に感謝した。
その後、都心のオーディション会場に向かう。いつも私が歌っている場所だが、今日は案内アナウンスもマルチビジョンもすべて止められ、歌う場としての体裁が整っている。
今回のエントリーは前回なみの18組。内訳は音楽系6組、ジャグリング系5組、ダンス系4組、その他3組といったところ。ジャグリング系は第1期で大量合格しているので少なめで、前回2組だった音楽系エントリーが大幅に増えた。東京を始め、遠方からの参加も多数あった。
知り合いのライブハウスマスターのユニットの出番は9番目だったが、2組目からのパフォーマンスを見学した。
第1期の7ヶ月間に及ぶパフォーマンス実績で定着したせいもあるのか、見物客は第1期よりも大幅に増え、ざっと200名ほど。かなりの盛況である。
今回、音楽系ではプロ&セミプロも数組参加した。実績あるプロといえども、普通にオーディションを受けて合格しないと何もできないという厳しさだが、それだけの価値がこの場にはある。
全部で8組のパフォーマンスを見届けて帰ってきたが、レベルとしてはさまざまで、全体的な雰囲気は第1期と大差ない。
帰宅して数時間経って事務局から今日の合格者リストがメール送信されてきたが、合格率は70%程度で、第1期とほぼ同じ数値である。
10年の歴史がある東京都のヘブンアーティストではおよそ60%程度の合格率と聞くから、初期段階としては妥当なところか。知り合いのライブハウスマスターのユニットはめでたく合格していて、さっそくお祝いの電話をした。
結果として私以外に5組の音楽系パフォーマーが増えた。そのうち弾き語り系は3組で、プロ&セミプロも含まれている。
第1期も含め、自分なりに合否ラインを推測してみた。
1)地下歩道を通り過ぎる市民がふと立ち寄り、ひと時を楽しめるパフォーマンスであること。これは第1期から変わらぬ不動の基準で、最も大事な部分だろう。あまりにマニアックだったり、お色気過剰だったりする芸は不可のようだ。
2)技術的にある一定のレベルに達していること。当たり前だが、芸にミスが多すぎるのは不可。多少のミスをごまかす技を会得している場合は合格する例もある模様。それも含めて「芸」ということか。たとえミスはなくとも、宴会芸の延長に近いものは不可という印象だ。
めでたく関門をクリアした方々にはひとまずお祝いを申し上げたいが、次には「いかにして自分だけの力で場を作り、客を集めるか」というストリート特有の大きな関門が待ち構えている。実はオーディションよりもこちらのハードルのほうが遥かに高いかもしれない。
私も含め、さらなる創意工夫と切磋琢磨が必要である。